前回コラムで取り上げたスマートスピーカーですが、今回は、再びスマートスピーカーとフィンテックをテーマに、現状での日米における違いに言及してみたいと思います。

スマートスピーカーを巡る覇権争い

これらの製品の中で、現実にフィンテック的な動きとの連携が行われているのは、アメリカで先行するGoogle HomeとAmazon Echoなので、この2つを中心に話を進めていきましょう。

まずは余談ですが、Amazon Echoは、当然ながらアマゾンのEコマースの入り口として電子御用聞き的な役割も担っています。これに対し、Google Homeは一般的な音声検索では有利でしたが、グーグルが自社でEコマース事業を抱えているわけではないので、この面ではアマゾンに対抗できないのではとの見方もありました。

そこでグーグルは、Google Expressという通販プラットフォームを立ち上げ、コストコやトイザらス、ロクシタン、バーンズ&ノーブル(書籍分野でのアマゾンのライバル企業)などと組んで即日配達サービスを行ってきた経緯があります。

最近になって、このGoogle Expressの取り組みに、強い味方が現れました。それは、世界最大のスーパーマーケットチェーンであるウォルマートです(ちなみに、日本の西友も同社の傘下に入っています)。

ウォルマートは売上額でも世界トップの企業ですが、近年はアマゾンの事業拡張や自然派スーパーチェーンのホールフーズ(実は、Google Expressにも参加しています)の買収などによって、その地位が脅かされ始めていました。
  ウォルマートも実店舗だけでなくEコマースにも力を入れているものの、さすがにアマゾンのようなIT系ビジネスには手を出しておらず、スマートスピーカーを自社で手がけるノウハウも戦略もありませんでした。そこで、グーグルと協業し、顧客が登録したウォルマートアカウントをGoogle Expressに紐付けることで、Google Homeから声による発注を可能としたわけです。

このように、アメリカではEコマースにおいてもスマートスピーカーを巡る覇権争いが起こるほど、この分野が重要視されてきています。それでは、フィンテック関連ではどのような動きがあるのでしょうか?

スマートスピーカー対応のフィンテック動向

前々回のコラムでも触れたように、スマートスピーカーのフィンテックへの応用は、色々な可能性を秘めています。デバイス自体の導入が開始されたばかりの日本でも、たとえばGoogle Homeでは、今日の株価を訊くと日経平均を教えてくれる程度のことができ、Amazon Echoになると、実際にみずほ銀行や三井住友銀行が対話による金融サービス(当初は、預金口座の残高や入出金明細の照会)までサポートされています。

また、同じくAmazon Echo向けですが、住信SBIネット銀行株式会社は同銀行の残高照会と為替レートの確認を、じぶん銀行は、AIによる外貨予測(1営業日後、および5営業日後の予測)、スポーツくじ BIGのキャリーオーバー金額・販売情報、および保有資産残高の確認を、それぞれ行えるようにしていますし、この他に証券会社や信販会社なども株価や請求額、ポイント保有数などを紹介できるサービスを提供中です。
  処理内容が照会や確認のみなのは、それ以上のことを行うには金融法の整備が必要なためですが、近い将来には資金移動や貯蓄、資産形成サービスなどへの対応も行なっていくとされています。

一方でアメリカでは、やはりAmazon Echoがリードする形で、米金融大手のキャピタルワン・フィナンシャルやU.S.バンクが高度な預金・支払い管理(口座からのカードやローンの支払いなども含む)を声で行えるようにしているほか、シティバンクもテスト運用を行なって前向きに検討中です。

Google Homeの展開としては、イギリスでモバイルバンキングサービスに力を入れているスターリングバンクが残高確認や送金を行えるようにしており、今後、さらなる機能を追加することを表明しています。

今は、スマートスピーカーが日本市場に導入されただけでも話題になり、実際にも大きな意義がありますが、早く欧米並みのサービスが日本でも開始され、製品の利用価値が高まることを願う今日この頃です。


執筆者:大谷和利

テクノロジーライター,原宿AssistOnアドバイザー,自称路上写真家。Macintosh専門誌, デザイン評論誌, 自転車雑誌などの誌上でコンピュータ,カメラ,写真,デザイン,自転車分野の文筆活動を行うかたわら,製品開発のコンサルティングも手がける