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人生100年時代に向けたマネー戦略
将来に備える

人生100年時代に向けたマネー戦略

取材の学校 ライター 堀江賢一
2018
01
23

『人生100年』。この言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。昨年の8月、安倍内閣総理大臣が記者会見の中で語った言葉です。内閣改造後、各大臣への期待として語られる中で用いられました。

その内容は抜粋すると以下です。『茂木大臣には、今回新たに設けることとした「人づくり革命」の担当大臣もお願いしました。子供たちの誰もが家庭の経済事情にかかわらず夢に向かって頑張ることができる社会。幾つになっても学び直しができ、新しいことにチャレンジできる社会。人生100年時代を見据えた経済社会の在り方を大胆に構想してもらいたいと思います。』

さて、この人生100年という言葉、どこから出てきたのでしょうか。また、なぜ人生100年なのでしょうか。

この言葉は、2016年11月に出版された大ベストセラー、「LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略」(リンダ・グラットン, アンドリュー・スコット (著) :東洋経済新報社)で用いられ、多くの人々に知られるようになりました。この書籍では、私達の人生はこれまでよりずっと長くなること、そして今までの慣習のままに生きると長寿が厄災になってしまうこと、そうならないように何をするべきかが克明に語られています。特に、世界で最も少子化と高齢化が進んでいる国として日本を例に挙げ、現在50歳未満の日本人は100年以上の人生を歩むつもりでいたほうがよく、新しく現れる人生のステージに対して早めに準備せよと警鐘を鳴らしています。

今後伸び続ける健康寿命

過去200年のほとんどの期間、平均寿命は右肩上がりで伸びてきています。加えて、医療の進展により、平均寿命が伸びるだけでなく、健康上の問題がない状態で日常生活を送れる健康寿命も伸びてきています。アメリカで2万人を調べたデータによると、1984年~2004年の20年間で、85~89歳のアメリカ人のうち、身体が不自由とされている人の割合は22%から12%に低下しています。また、95歳以上の場合もこの割合は52%から31%に低下しています。

つまり、高齢者は昔より健康に生きていて、テクノロジーの進歩と公的支援の充実により、できることも増えてきているのです。確かに、スポーツジムでは高齢な方々が生き生きと楽しそうにスポーツを楽しむ姿が多く見られますし、みなさんの中にもご自身の周りに健康な高齢者が増えたという印象をお持ちの方はいらっしゃるでしょう。ただし、2007年のOECD(Organisation for Economic Co-operation and Development:経済協力開発機構)の調査によると、調査対象12カ国のうち、アメリカなど5カ国では不健康期間が短縮しましたが、3カ国では不健康期間がむしろ長くなり、2カ国では変化がなく、2カ国では明確な結果が得られていません。国によっても違いがあるようです。健康寿命を伸ばせるかどうかは、公衆衛生や生活習慣の改善によっても変わってくるようです。

長生きであるがゆえに訪れる貧困

近年雇用の流動性が高まっているとはいえ、まだまだ日本では終身雇用が生き続けています。そのため、人生の中で1社だけに勤め上げ、60歳になったら定年退職、という人生を歩む人が多いのではないでしょうか。年金の支給が65歳からなので、60歳から65歳までは今までの貯蓄や退職金などで食いつなぎ、65歳以降は年金で暮らしていく。そのようなプランを描いている方も多いことでしょう。しかしこのプランは以下2つの点において実現性が低いと言わざるを得ません。

①年金資産は枯渇する可能性
ご存じの方も多いでしょうが、日本は世界に類を見ない借金大国です。その額はついに1,000兆円を超えました。たとえば2017年度でいうと、国家予算は97兆4547億円です。これに対し、主な財源である税収は57.7兆円です。残りの約40兆円はどうしているかというと、国債で賄っています。つまり、借金をしているわけですね。この借金が積もり積もって1,000兆円を超えてしまっているのが今の日本なのです。借金ですから返さないといけません。しかしながら、この借金を返すための具体的な手立てが打ち出されていません。となるとどうなるでしょうか?現在国が溜め込んでいる財源を借金の返済に当てる可能性があるのです。そう、年金資産もその対象に当たるのです。

厚生労働省が2004年に100年安心プランというものを出していますが、それを学習院大学の鈴木亘教授が改変したものが以下の図です。国民年金は2037年に枯渇、厚生年金も2033年に枯渇するという予想がなされています。つまり、現在年金を受給している方も含めて、年金資産が枯渇して年金がもらえなくなることを想定しておかなければならないのです。

図1.国民年金・厚生年金資産の推移

②急激な収入減に生活パターンを合わせられない
もう一つが、年金がもらえたとしても収入が急激に減るため、生活パターンを合わせられず、毎年赤字の構造になってしまうことです。たとえば、大学卒業して普通に働いて65歳から年金を貰う場合を想定します。厚生年金の年金額のもとになる標準報酬月額には上限があります。最大金額をもらっていたと仮定しても、年間の受給額は300万円程度です。共働き世帯だったとして、最大でこの2倍もらえたとしても600万円です。

ライフスタイルは人によって異なりますが、定年退職する頃には年間600万以上の給料をもらっているケースのほうが多いのではないでしょうか。一般的に、収入が増えればその分支出も増えます。よりよい生活をしたいという心理が働くからです。そのため、年金生活になった瞬間に、毎月の家計が赤字に陥ってしまうのです。赤字になることを見越して支出を抑えるなど節制をするライフスタイルにしておかないと、年金生活に入ってから急激にライフスタイルを見直さざるを得なくなります。ライフスタイルの変更は生活習慣の変更ですから、それなりに時間と労力を要します。ここで失敗してしまうと、貯蓄を赤字で食いつぶす負のスパイラルに突入してしまうのです。

そして、貯蓄と年金資産を食いつぶす構造にはまってしまうと、長生きをすればするほど赤字が拡大するという恐ろしい事態が待っています。長生きをすればするほど貧困になってしまうのです。

豊かな人生を歩むためのマネー設計

健康寿命が伸びても貧困に陥ってしまっては豊かな人生を楽しむことなどできません。今わたしたちに必要なのは、長く生きても困らないだけのマネー設計をすることなのです。では、具体的にどうすればよいのでしょうか?以下の手順で進めてみましょう。

  1. 退職してから100歳になるまでに必要な収入の総額をざっくり把握する人生100年とし、65歳でリタイアすると仮定して、100歳までに必要な総収入をざっくりで良いので把握しましょう。たとえば、現在手取り年収500万で、退職後もそれと同等の年収が必要なのであれば、500万×35年=1.75億円です。※老後の介護資金など細かいものは色々ありますが、一旦ここではそれを省いて大まかな額を把握します。
  2. ご自身の年間収入・年間支出・年間貯蓄を詳細に把握する次に、ご自身の年間収入・年間支出・年間貯蓄額等を詳細に把握しましょう。何にいくら使って、どのくらいを貯蓄に回しているのか。表計算ソフトなどを使って詳細に把握します。
  3. ご自身が100歳になるまでの損益表を作成する2で作成した1年分の損益表に、ご自身の年齢を加え、100歳になるまでの損益表を作成します。その際には、昇進や結婚、出産などのライフイベントも書き入れるようにすると良いでしょう。定年退職後の収入は不透明な部分が多いでしょうが、日本年金機構のホームページでシミュレーションなどを行って予想額を記入します。日本年金機構~ねんきんネット~
  4. 1で算出した必要額と3で算出した額のギャップを把握する3で算出した年収の合計と1でざっくり算出した額には大きな開きがあると思います。このギャップの額がどのくらいで、何によって生じているのかを把握しましょう。おそらく、年金が思ったほどもらえないためにギャップが生じている方がほとんどではないかと思います。ではこのギャップをどうやって埋めればよいのでしょうか。さまざまな案がありますが、確実性が高い方法についていくつかご紹介しようと思います。

人生100年というのは簡単ですが、さまざまな準備をする必要があります。しかし、長生きが出来るということはそれだけ人生を長く楽しむことが出来るということでもあります。ぜひお金の計画を見直して、人生100年時代に備えたご自身なりのマネープランを作成してみてくださいね。

筆者プロフィール

取材の学校 ライター 堀江賢一

1977年生まれ。福岡県育ち。九州大学大学院理学府修了。中小企業診断士、ファイナンシャルプランナー(AFP)。 大手電機メーカーにてグローバルSCMプロジェクトやインターネットコンテンツ配信システムの販売、事業部改革プロジェクトなどに携わる。システム開発、販売、組織改革と、企業組織活動のあらゆる面を経験。その後コンサルティング企業を経て、現在はインターネット企業で、クラウドの事業戦略やマーケティング戦略の立案と実行に尽力している。戦略と実行計画の立案、プロジェクト推進が得意。 趣味はアカペラとテニス。友人と5人でアカペラユニットを組んでおり、結婚式などで歌を披露している。全日本テニスランキング保持者。

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