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損をしないための年末調整と確定申告
制度を知る

損をしないための年末調整と確定申告

武藤貴子
2018
10
18

会社員として働いていると、納税は会社が代わりに行ってくれるため、普段はなかなか税金について意識することはないかもしれません。改めて考える機会があるとすれば、毎年年末に会社で行われる「年末調整」や、必要に応じて自ら行う「確定申告」の時でしょう。年末調整や確定申告は、税金で損をしないための大切な作業でもあります。特に会社員は「確定申告」を見落としがちです。年末調整や確定申告の必要性について、改めて考えてみましょう。

会社で行う年末調整は何のため?

毎年決まって行われる年末調整は、給与を支払う会社の義務となっています。ではどのような理由で、年末調整が必要なのでしょうか。会社員や公務員の場合、毎月の給料から税金が天引きされて振り込まれています。これを、源泉徴収と言います。しかし、毎月差し引かれている税金の金額は概算であり、必ずしも正確であるとは言えません。そのため、年末に調整を行い、最終的に正しい納税額を決定するのです。

年間の納税額は、1月1日から12月31日までの1年間の収入から控除を差し引いた金額を算出し、そこに所得水準に応じた税率を掛けたものになります。年末調整をすることで、納め過ぎた税金がある場合は還付金が受け取れますし、反対に、不足している場合は追加で徴収されることになります。

この年末調整は、会社にとって義務であるだけでなく、そこで働く社員にとっても重要な作業です。それは、従業員が各自必要な書類を提出することで、個人ごとの事情を踏まえた所得税の控除が行われるためです。たとえば、扶養家族がいる、生命保険を払っているなどを証明する書類を提出すれば、所得税が控除されます。ですので、少し面倒な作業ではありますが、所得税控除の対象に関する書類は忘れずに提出したいですね。年末調整で提出する書類には、以下のようなものがあります。

・「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」
扶養している家族の状況に関して記載します。扶養家族に関して申告を行い、家族の状況によって控除を受け税金を減らすための申告書です。

・「給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」
年末調整で控除される保険料について記載します。記載する保険は、生命保険料控除の対象となる「一般生命保険料」「介護医療保険料」「個人年金保険料」と、地震保険料控除である「地震保険料」があります。なお、生命保険や地震保険に加入していると、秋ごろに保険会社から「生命保険料控除証明書」や「地震保険料控除証明書」などが届きます。この控除証明書も申告書とともに提出しましょう。

確定申告とは。なぜ必要なの?

一方、確定申告は、年末調整と比べると会社員の人にはなじみの薄い制度かもしれません。確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間に得た所得を計算し、翌年の2月16日~3月15日の間に申告・納税することです。会社員の場合は先述の通り、給与から概算された税金が天引きされ、年末調整によって正確な金額を清算します。

そのため、確定申告は、主に個人事業主が行う申告のように思われていますが、年末調整では控除の手続きができないものものあります。年末調整ではできない控除を受けて払い過ぎた税金を返してもらうためには、会社員であっても確定申告を行う必要があるのです。また、副業をしていて会社の給与以外に収入がある場合など、確定申告の義務が生じる場合もあります。

会社員が確定申告で受けられる控除の種類

それでは、年末調整では控除されなくても、確定申告を行うことで受けられる控除にはどのようなものがあるのでしょうか。

・医療費がたくさんかかった場合に受けられる「医療費控除」
年末調整で控除されると勘違いしている人が多くいるのが、「医療費控除」です。医療費控除は、年間に家族全員分の医療費の合計額が10万円(所得が200万円未満の場合は所得の5%の額)を超えた人が受けられます。

また、2017年分以後の確定申告からは、「セルフメディケーション税制」が導入され、医療費控除といずれかを選択して利用できるようになりました。セルフメディケーション税制とは、会社や自治体の健康診断を受けたり、インフルエンザの予防接種を受けたりするなど、日ごろから健康のために一定の取り組みを行っている場合、対象となるOTC医薬品の年間購入額が1万2,000円を超えると受けられる控除です。

・仕事に必要な費用を自分で払った場合に受けられる「特定支出控除」
仕事上の経費を自分で負担し一定の金額を超えた場合、確定申告を行えば払い過ぎた税金を取り戻すことができます。特定支出控除の経費と認められるものは、通勤費や転勤にかかる転居費用、資格取得費、研修費、単身赴任者が帰宅にかかる旅費、書籍代、業務に関する衣類の購入費などが当てはまります。自腹を切った経費がある場合は、特定支出控除が受けられる可能性があることを頭に入れておくと良いでしょう。

・寄付やふるさと納税を行った場合に受けられる控除
国や地方公共団体など特定の団体に寄付を行った際には、「寄付金控除」が適用され、所得税の所得控除が受けられます。ふるさと納税もこれに該当します。また、認定NPO法人や公益社団法人などへ寄付を行った場合は、その金額の一部を所得控除にするか税額控除にするか選択することができます。

・盗難や災害に遭った場合に受けられる「雑損控除」
雑損控除とは、自然災害や盗難などによって家や家財、現金など生活に必要なものが被害に遭ってしまった時に適用される控除です。雑損控除では、以下のうち多い金額が控除されます。

①(差引損失額)-(総所得金額等)×10%
②(差引損失額のうち災害関連支出の金額)-5万円

なお、1年間の所得金額以上の損失が生じてしまった時は、雑損失の「繰越控除」が可能となります。1年間の所得から差し引きできない損失は翌年以降3年間、繰り越すことができるのです。この繰越控除は、所得控除の中で雑損控除だけに認められている仕組みです。

・住宅を購入したりリフォームを行ったりした場合に受けられる「住宅ローン控除」
一定条件のローンを組んでマイホームを購入したり、省エネやバリアフリーなど特定の改修工事をしたりすると、年末のローン残高に応じ「住宅ローン控除」を受けることができます。確定申告が必要なのは初年度だけで、翌年以降は会社の年末調整で手続き可能です。

年末調整や確定申告を正しく理解して活用しよう

年末調整や確定申告は、「手続きのために仕方なく行っていた」という人もいるのではないでしょうか。しかし、受けられる控除を理解して活用すると、損することなく納税するができるのです。書類や証明書の準備は少し手間ですが、手元に戻せる税金はしっかり取り戻しましょう。

筆者プロフィール

武藤貴子

ファイナンシャル・プランナー(AFP)。1983年埼玉県生まれ。会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやコラム執筆を行う。独立後は、起業のコンサルティング業務とともに、執筆や個人マネー相談、メディア出演などを中心に活動中。著書に『いちばん稼ぎやすい簡単ブログ副業』(河出書房新社)がある。

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