大学で非常勤講師を務める著者が、大学生から投げかけられる疑問に答えます。今回は「就職先は大企業や公務員だと安心できるのか」というテーマでお話ししたいと思います。

大企業や自治体などに勤めることができれば、より安定した生活が得られる可能性は高くなるかもしれません。しかし、それだけで安心できる世の中ではないことも意識しておき、若いうちから対策を取っておくことが重要です。

「将来安泰」というのは、どんな状況?

大企業の従業員や公務員として就職することが「安泰」なのかを考えるためには、まず「どんな状態が安泰なのか」を考えておく必要があります。

そこまで意識して考えていなくとも、「仕事やお金のことでそんなに困ったことが起きない」というレベルで考えているというのが多くの学生と話をしてきた印象です。

「大企業や公務員なら、倒産することもないし給与も上がっていく。だから、仕事を失う可能性も低く、退職金などで老後も安心できるだろう」。ここまで楽観的すぎる考えの学生は、さすがに少数です。多くの学生が、「中小企業よりは、名の知れた大企業の方が良いだろう」と考えていますが、その一方で、「本当に将来も安心できるのかな?」と漠然とした不安を抱えています。

私は、「大企業だから安心」「公務員だから安心」という考え方は古いと感じています。 これからの時代を生き抜いていくためには、
・どこに就職しようと、就職先を理由に将来が安泰になるということはない
・大企業の従業員や公務員でなくても、努力や考え方次第で、将来を安泰にしていくことはできる
と考えておくべきです。

自らキャリアアップしないと収入が増やせない時代へ

今年になって、「働き方改革関連法(通称)」が成立しました。まだまだ年功序列型の賃金制度が残っていますが、これから徐々に同一労働同一賃金へと変化していくでしょう。つまり、「何年働いたか」ではなく、「どんな仕事をしているか」で賃金が決まるように変化していきます。

今や、経済はグローバル規模で動く時代であり、日本国内の企業であっても、外国の企業との競争にさらされています。これは人材の確保においても同じことで、「誰でも大卒なら月給20万円」「成果の出せる人材でも、待遇にはあまり差が出ない」のでは、優秀な人材は集まらなくなっているのです。

発展途上国よりも人件費が高く、他の先進国よりも生産性が低いままでは、日本の競争力は低下するばかりなのです。より高い能力でより重要な仕事をしている人に対してだけ、高い給与を支払うようになるのは必然と言えるでしょう。 (公務員の給与は一般企業の給与を参考にして決められるため、結果として、大企業と似た傾向になっていくと考えられます)

働く側の労働者は、そういった変化に対応するためにも、いろいろな会社から必要な人材だと感じてもらえるよう、社会人になってからも自分からキャリアアップするようにすべきです。

もし、漫然と会社に勤務しているだけであれば、勤めている企業が競争に敗れてしまった場合にどうすることもできず、希望する転職先がなかなか見つけられなくなってしまう可能性もあるでしょう。

このような未来になれば、大企業に就職したけれど成長しない人よりも、中小企業でもがんばって成長した人の方が、明るい将来が待っているのが当たり前になっているかもしれません。

収入が減ってしまうと、退職金にも影響が

キャリアアップを通して収入を増やせないと、退職金も低くなります。 一般に、現行の退職金制度(注)の多くは、給与額と勤続年数に左右されます。つまり、給与水準が下がってしまうことで、退職金も大きく減少する可能性があるのです。 また、転職をした場合は、勤続年数が短くなり、その分だけ退職金を期待できなくなる可能性も否定できません。

注)退職金代わりの確定拠出年金が広がっていくと、今のような退職金という概念はなくなるかもしれませんが、すべての企業がそのような制度になっていくのには非常に時間がかかると思われます。

早くから資産形成を意識して、資産運用も考えるべき

今の若い世代の課題は、年功序列型賃金の崩壊だけではありません。 日本では、世界に類を見ないスピードで少子高齢化が進行しています。その影響で、将来、年金が目減りすることや社会保障の自己負担額が増加することなどが懸念されています。

「人生100年時代」とも言われる昨今では、70歳まで働いたとしても、30年間の老後生活を送ることになるかもしれません。ただ仕事をして、超低金利の銀行に貯蓄するだけでは、安心できる老後生活を送るだけの資産を築くことができないかもしれません。

今の高齢者は、年齢に応じて給与が上昇し、それによってできた貯蓄を、昔の高金利で増やすことができました。しかし、これから社会人になる人たちには、自動的に給与が上がることも高金利も期待できません。

また、健康年齢の上昇や定年の引き上げで働くことができる期間は長くなるかもしれませんが、年金が目減りすることで、引退後の収入は今の高齢者より少なくなることは、ほぼ確実です。 そこで、得られる収入の範囲内で生活して貯蓄する習慣をつけながら、資産を少しでも増やすために、貯蓄の一部を使って資産運用をすることも視野に入れましょう。

満足いく生活を送りたいのなら、どうすればいいの?

こういった理由から、大企業や公務員であっても将来が安泰だと考えるのは良くないでしょう。

確かに、大企業や公務員であれば、比較的、安心した老後が送れる可能性はアップすると思います。実際に勤めた企業や自治体などが破綻してしまう可能性も高くはないでしょう。 しかし、ここで忘れてはならないのは、「あなた自身の生活はどうなのか」ということです。

仮に、大企業に勤めることができれば老後が安泰だという確率が80%だったとします(実際にはもっと低いと思いますが)。 高い確率だから安心できるかもしれませんが、もし20%のグループに入ってしまったときに、「運が悪かったけれど、仕方がないな」とあきらめることはできますか?

そんなことはないでしょう。一度きりのあなた自身の人生を、「運が悪かった」で片づけられるはずがありません。だからこそ、「もしかすると良くないほうに転んでしまうかもしれない」という最悪のケースも意識しておき、そうなってしまわないように、また仮にそうなってしまっても大丈夫なように、努力をしておくべきなのではないでしょうか。

誤解のないように繰り返しておきますが、「悲観的に考える」のではなく、「悲観的なケースを意識して」行動してください。明るい未来を実現するためには、「自己研鑽や資産形成を通して、最悪のケースになってしまうリスクを下げるんだ」と意識しておくのが大切なのです。

健康で長く働くことができるよう心がけること

最後に、就職とは関係ありませんが、安心できる老後生活のために考えておかなければならないことがもうひとつあります。それは「健康で長く働くこと」です。

「老後生活のためには、○歳のときにいくら貯蓄があればいいか」という問題が、よく議論されています。しかし、40~50年先のことは予測するにも限界があるため、大学生などの今若い人たちにとっては、今の情報で書かれた貯蓄額が正しいとは限りません。

しっかり貯蓄することは大切ですが、今から意識できることとしては、健康を維持して働き続けられるようにできるかが重要なのではないでしょうか。

医療や介護技術の進歩によって、多少の病気があっても長生きすることができます。とはいえ、そこには生活費がついて回ります。つまり、健康状態が原因で早くリタイアすることになったら、そのあとの長い老後生活に必要な生活費はそのままで収入が減少するというリスクがあるのです。

だからこそ、できるだけ長く働いて収入を得られるようにするために、早いうちからライフスタイルにも気遣って生活習慣病などのリスクを下げられるようにしておくことも必要です。

まとめ

以上のように、これからの社会ではキャリアアップや能力開発を通して成長できる人材でなければ、「将来の安泰」を手にすることが難しくなる時代だと言えます。「大企業だから」「公務員だから」と油断していると、知らないうちに将来の可能性が失われていってしまうでしょう。 「国や会社が守ってくれる」という受け身ではなく、自分で自分の将来を切り開こうとする積極的な姿勢が欠かせません。将来の安泰のために次の3つのことを心がけたいところです。

・同一労働同一賃金時代に備え、キャリアアップを図ること
・退職金や年金に過度に期待せず、貯蓄の一部を資産運用に回すなど資産形成を考える
・長く健康に働くためにも、健康的な生活を心がける

大変なようにも思えますが、ここまで考えておく必要があるのではないでしょうか。


執筆者:横山研太郎

ねこのて合同会社 代表。1978年大阪生まれ。1級ファイナンシャルプランニング技能士。保険と投資をミックスした「守りと攻めを両立させる」資産形成プランを提案する。大学の非常勤講師を務めるなど、金融教育にも積極的に取り組んでいる。

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