大学で非常勤講師を務める著者が、大学生から投げかけられる疑問に答えます。今回は「就職したあと、どれくらい貯蓄すればいいのか」というテーマを取り上げ、主に20代の若い世代の貯蓄の考え方についてお話しします。

まだまだ若いため、老後のための貯蓄は必要とはわかっていても、収入も低くてなかなかお金が貯まらないという人も多いでしょう。そんなみなさんが、どのように考えればいいかを簡単にまとめました。

「平均的な貯蓄があれば大丈夫」ではない

ネットで「20代」「貯蓄」といった言葉で検索をすると、「20代の平均貯蓄額」、「手取りのどれくらいを貯蓄に回せばいいか」といった記事がたくさん見つかります。そして、さまざまなデータが紹介されています。例えば、次のようなものです。

“厚生労働省の「平成28年国民生活基礎調査」によれば、29歳以下の1世帯当たり平均貯蓄額は「154.8万円」です。「手取りの20%程度を貯蓄できればいい」と言われているので、毎月3~4万円程度貯蓄できれば、4年前後で平均貯蓄額くらいになるでしょう。”

しかし、それで良いのでしょうか。 総務省が調査した「平成29年家計調査」では、世帯主が29歳以下の1世帯当たり貯蓄は預貯金で「293万円」となっています。また、手取りの何%を貯蓄に回せばいいかも、記事を執筆している人によって変わります。

加えて、あなた自身がどのような生活をしたいかなどの条件によって、いくら貯蓄すればよいかは変わってきます。「平均値を超えていれば大丈夫」と一概に言い切ることはできないのです。

まだ20代で「老後のことを具体的に考える」のは非現実的

20代の人たちが、貯蓄の平均値のような金額的な目標を目指す意味があまりないのには、もう1つ理由があります。それは、老後のことを具体的に考えることが非常に難しいからです。

少子高齢化が進行し、年金支給額が目減りしていくと言われています。けれども、どれくらい目減りするかは決まっていません。また、今の20代の人たちが年金を受け取る年齢が70歳に引き上げられているかもしれません。そんな状況で、今から40~50年後のことを予測するのは非現実的です。

定年退職時にいくらの貯蓄があればいいかという話も、今の制度から想像できる範囲で書かれた金額にすぎません。遠い未来のことを空想して、それにあわせて貯蓄しようとするよりも、近い将来に備えることから始めてみてはどうでしょうか。

結婚や子供ができるなら貯蓄しておかないといけないのは理解できるでしょう。結婚しないのであっても、ひとりでできるだけ多くの資産を作っておかなければならないと想像できるはずです。

それならば、まずは貯蓄を始めて、30代、40代と年を重ねた時に、現実的な目標額をイメージしていけばよいのではないでしょうか。

まずは今から始められる「資産形成の練習」を

それでは、具体的にはどのように貯蓄を始めればよいのでしょうか。まずは、貯蓄する習慣をつけて「資産形成の練習」を始めましょう。

50歳になってから、突然、「老後に向けて、これから15年でさらに1,500万円貯蓄しないと」と気づいたのでは、その時点から毎月8万円以上の貯蓄をしなければなりません。それまで意識的に貯蓄をしてこなかった人にとって、これはとてつもなく高いハードルです。

20代のうちから、少しずつでも貯蓄をすることができていれば、「老後のために、これからはあと1万円余分に貯蓄しよう」と計画的に積み立てることができ、老後が迫ってきたときに慌てる必要もありません。

また、高齢化・超低金利という状況では、貯蓄だけでなく、資産運用も選択肢にして「資産形成」していくことが大切です。資産運用は、利益が出た分をさらに投資に回せる「複利効果」があるため、早い時期から始める方が有利になります。

そのため、若いうちから貯蓄を始めて、ある程度の資産が作れた段階で、投資の勉強をしながら少額で投資を始めるのが資産形成に効果的です。

「貯蓄分を差し引いたお金」で生活をしてみよう

最後に、貯蓄する習慣をつける便利な方法をお話しします。

それは、収入があったら、貯蓄金額をあらかじめ別の銀行口座に移しておく「先取り貯蓄」という方法です。口座に残ったお金をつい使いすぎてしまった、ということを防ぐため、貯蓄用の口座を持っておくのです。

はじめは1万円でも5千円でも構いません。しばらくは貯蓄する習慣を身につけるための期間であり、いくら貯めるかは重要ではありません。

「手取りの20%を貯めるべきだから、3万円貯蓄しよう」と考えて始めたものの、そのせいで生活費に回せるお金が少なくなってしまい、貯蓄することが嫌になってしまうのでは本末転倒です。

例えば、1万円から始めてみて、「まだ余裕がありそうだ」と思ったのであれば2万円に増やしてみたり、昇給したタイミングでその分を増やしてみたりして、無理のない貯蓄の成功体験を積んでいきます。

そして、しっかりと貯蓄する習慣が確立した段階で、個人年金保険や投資信託などの金融商品で運用もあわせて考えるようにしましょう。

まとめ

将来に向けて、若いうちから資産形成することは非常に大切なことです。しかし、貯蓄をすることが目的になってしまっては、生活に楽しみがなくなってしまいます。まずは無理なく貯蓄を始めることを重視してみてください。

ただ、今を楽しみすぎると、将来にそのツケが回ってきます。ある程度貯蓄することと合わせて、自身のキャリアアップを通して、しっかりと収入を増やしていける努力も忘れないでくださいね。


執筆者:横山研太郎

ねこのて合同会社 代表。1978年大阪生まれ。1級ファイナンシャルプランニング技能士。保険と投資をミックスした「守りと攻めを両立させる」資産形成プランを提案する。大学の非常勤講師を務めるなど、金融教育にも積極的に取り組んでいる。

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