今回は、先日訪れた、隣国の台湾の電子マネー事情についてお話ししたいと思います。

台湾で体験したユニークで合理的なメトロの改札システム

以前から何度か訪れている台湾ですが、電子機器製造が重要な産業となっているだけあって、早くから電子マネーの普及にも力を入れており、特に公共交通機関の場合には最大で運賃が1/3になることもある点や、レンタサイクルも利用できる点(日本でも可能なサービスが出てきていますが、台湾は圧倒的に安価です)が個人的には魅力です。

たとえば鉄道の改札一つとっても、日本では現在もSuicaのような交通系の電子マネーを非接触で認識する方式と、紙の切符を機械的に読み取る方式が、都市部でも併設されています。しかし、台湾で筆者が訪れた台北と高雄のメトロ(MRT:大量高速輸送手段の略で、基本的には地下鉄を指します)では、すべての改札が非接触式でした。

それでは、電子マネーを持っていない人はどうするのか、という疑問がわきます。実は、自動券売機で切符も購入できますが、出てくるのはコイン型のトークンと呼ばれるものです。コイン型なので改札でどこかに投入するものと思いがち(筆者も最初はそうでした)ですが、探しても投入口はありません。というのは、このトークンも非接触式のタグで、電子マネーのカードと同じように改札では読み取りエリアにタッチするだけで通過でき、降りた駅の出口改札の投入口に入れて回収・再利用されるようになっています。

なぜ、このような仕組みなのかと考えてみると、おそらく改札をすべて非接触式にすることが、運用面でもコスト面でも合理的だったからでしょう。日本の紙の切符も回収後にリサイクルされているとは思いますが、それなりの費用と時間がかかります。トークンであれば、自動券売機に再度セットするだけで、販売時に新たな情報が書き込まれて何度でも利用できるわけです。

また、日本の改札では、日中でも内部を開けて調整しているところを時々見かけますが、紙の切符を高速に、かつ確実に読み取りながら通す搬送メカニズムは、メンテナンスの手間と費用も無視できません。

いずれにしても、台湾のメトロでは電子マネーが最優先で、現金客もそのシステムに合わせる形でトークンを利用する形になっているといえます。また、メトロでは電子マネーを利用すると現金よりも15%(高雄)~20%(台北)の割引が受けられ、高雄のライトレール(市電)では30元の運賃が1/3の10元で済む体験もしました。

3つの方式に対応した台湾新幹線の改札

ただし、台湾でも高速鉄道(いわゆる台湾新幹線)の改札は、薄い樹脂製の切符を挿入して読み取る方式、QRコード付きの切符を光学的に読み取る方式、クレジットカード機能付きの交通カードを非接触式で読み取る方式、の3つに対応しています。ところが、樹脂製切符の挿入と受け取りは開閉式ゲートの手前で行われるため、読み取り処理の間はそこで立ち止まることになり、利用者が多いと改札前で渋滞が発生しやすくなるのです。

これも、切符の搬送距離を短くして機械的なトラブルを未然に防ごうとする工夫かもしれません。しかし、日本の場合には、逆にそうしたリスクがあっても大量の乗降客がスムーズに改札を通れるように、あえて人の移動に合わせて読み取りを行ない、足を止めずに受け取れるシステムを完成させたといえるでしょう。

幅広い交通系電子マネーの用途

台湾の電子マネーには、交通系の悠遊卡(ヨウヨウカー、EasyCard)と一卡通(イーカートン、iPASS)、流通系の愛金卡(アイジンカー、icash)と有銭卡(ヨウチェンカー、HappyCash)があります。交通系カードをコンビニで使えるのはもちろん、チャージすることもできます(日本でもSuicaをコンビニでチャージできますが、台湾ほど浸透していない印象です)。流通系のカードでも主要な鉄道やバスを利用可能なため、どれか1つあれば十分です。

中でも、特に利用範囲が広いのは70%近いシェアを占める悠遊卡で、筆者も現在はこれを愛用するようになりました。現地の携帯電話を用意する(あるいは台湾のプリペイドSIMを使う)などしてショートメッセージを受け取れる電話番号があれば、市内各所に無人ステーションのあるレンタルバイクシステムに登録して、交通系カードを駐輪スタンドにかざすだけで安価に借りられます(基本料金なしで、4時間以内ならば30分ごとに10元、日本円で約40円)。そのため、メトロでは行きにくい場所でも自転車で気軽に移動することができました。

さらに現地では、行政機関での諸費用や病院における医療費の支払いも交通系カードでできたり、公務員・従業員証としての利用、あるいは一卡通をルームキーとして使えるホテルも登場するなど、驚くほどその用途が広がりつつあります。

また、各電子マネーにはモバイル版もあるのですが、NFCチップを内蔵していない携帯端末でも利用できるよう、チップを内蔵したSIMカードを使う仕組みが浸透しました。

これらの動きは、1社が電子マネー市場を独占するよりも、相互運用によって、その用途を広げることが重要との認識が業界にあるためのようにも感じられます。

Apple Payも急速に普及中

最後に、筆者は悠遊卡の便利さに慣れ過ぎて帰国直前に気づいたために試すことができなかったのですが、台湾でもApple Payがかなり浸透していました。特に、セブン-イレブンなどの大手コンビ二エンスストアでは、普通に使えるようになっています。

ただ、日本ではApple Payを使う場合でも「Suicaで」という方が店頭でのやり取りがスムーズなのに対し、台湾ではそのまま「Apple Pay」でよく、カード名などは出さずに使えるようです。

台湾で実際にApple Payに登録して利用できるクレジットカードは、非接触式の決済に対応している「コンタクトレス」仕様のものに限ります。自分のカードが現地で普及しているMasterCardコンタクトレスをサポートしているかどうかは、直接、カード会社に確認しておく必要があります。

残念なのは、まだ台湾の交通機関ではApple Payを利用できないことで、これは改札が利用しているシステムとの間で互換性がないためとされています。FelicaベースのSuicaのときのようにアップル側がハードの仕様を変更するか、iOS 12でオープン化されたiOSデバイスのNFC機能を台湾の交通機関側が調べて改札システムに手を加えない限りは難しいようですが、前述のNFCチップ内蔵SIMのおかげで、iPhoneを交通カード代わりに使えることが救いかもしれません。

次に台湾を訪れたときには、ぜひともApple Payも使って、キャッシュレス旅行を楽しみたいと思います(それでも、町中の美味しい食堂や屋台のために小銭が必要なのが台湾ではあるわけですが…)。


執筆者:大谷和利

テクノロジーライター,原宿AssistOnアドバイザー,自称路上写真家。Macintosh専門誌, デザイン評論誌, 自転車雑誌などの誌上でコンピュータ,カメラ,写真,デザイン,自転車分野の文筆活動を行うかたわら,製品開発のコンサルティングも手がける。原宿アシストオンのウェブサイト

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