大学で非常勤講師として、金融教育を行なっている著者ですが、大学生から「お金に関する疑問」を投げかけられます。アルバイトや一人暮らしをして、初めて「お金と真剣に向き合う」ようになった人が多いでしょう。しかし、これまでお金について誰からも教わっていないが故に、後から問題に気付いて困った、というケースも少なくありません。そこで、これから3回に渡り、彼らからの疑問に答えていきたいと思います。今回は「アルバイトで稼ぐ金額によって所得税はどう変わるのか」という質問にお答えします。

年収103万円を超えると、所得税がかかる

学費や生活費の足しにしたい。社会人になる前に経験を積んでおきたい。大学生になると、さまざまな理由でアルバイトを始める人が多くなります。

アルバイトの時間を増やしていくと、「年収103万円は越さないほうがいいよ」という話を耳にすることでしょう。「103万円の壁」と表現されることもあります。

なぜそのような話が出てくるかというと「税金がかかるから」です。私たちが、会社員やアルバイトとして給与を受け取るとき、その金額に応じて、所得税と住民税がかかります。ただ、収入が少ないうちは税金がかからず、一定のルールで計算した「所得」が生じると、所得税・住民税が課税される仕組みなのです。

アルバイトでの所得税・住民税の計算方法

アルバイトでの収入は「給与所得」に分類されますが、それ以外に収入がない場合、所得税は次のように計算されます。あとで例を使って計算したものを書いていますので、まずは読んでみてください。

①合計所得金額を求める
合計所得金額=収入額-給与所得控除額(※)
※給与所得控除額は、給与収入が180万円以下の場合「収入金額の40%(65万円に満たない場合は65万円とする)」となります。他に収入がなければ、これが合計所得金額となります。

②所得控除を差し引いて課税所得金額を求める
合計所得金額を求めたあと、所得税の基礎控除として38万円などを差し引くことができます。住民税の基礎控除は33万円となっているので、注意が必要です。所得控除を差し引いた金額が課税所得金額と呼ばれます。

計算上、所得税では年収103万円を超えると、住民税では年収98万円を超えると、課税所得金額が生じて課税対象となります。

③課税所得金額に応じて所得税額、住民税額を計算する
課税所得金額が195万円以下では、所得税が「課税所得金額の5%」かかります。 住民税は、課税所得金額の10%程度の金額(所得割)と、全員に均等にかかる均等割(標準で4,000円)からなります。

収入モデルを使った税額シミュレーション

では、アルバイトで収入を得ている大学生3人を例に、税額を計算してみましょう。 parttime-103-family-tax 1 ※復興特別所得税(所得税額の2.1%)は計算に入れていません

Cくんは所得税が発生するため、その分だけ手取り収入が減ります。 parttime-103-family-tax 2 ※住民税は所得割10%・均等割4,000円で計算しています。地域によっては、これより税額が増える可能性があります。

住民税は、翌年に別で納付しなければなりません。 この結果、3人の税引き後の収入は次のようになります。 parttime-103-family-tax 3 以上のように、年収が多くなると、少しではありますが、税負担がかかってくることがわかります。 なお、所得税は年収103万円から、住民税は年収98万円からが課税対象です。

注意点:この記事では、アルバイトなどの給与収入以外には、以外の収入がないものとしてシミュレーションしています。給与所得以外の所得が発生する場合には、計算方法が異なる場合がありますので、ご注意ください。

親の税負担が大幅に増加してしまう

3人の収入と税額のシミュレーションから、税金の負担額はそこまで大きくないことがわかりました。税金の負担はあるものの、働いた分だけ、手元に残るお金も大きくなっていきます。 これだけを見ると、「103万円の壁と言っても、たいしたことないな」と思ってしまいますが、ここからが問題です。

合計所得金額が38万円以下(※)となる人は、親などの扶養家族になることができます。扶養家族とは「生活の面倒を見なければならない家族」のことで、扶養家族がいる場合には、扶養控除という所得控除が受けられ、税負担が軽くなるのです。
※給与収入に換算すると、年収103万円。所得税・住民税共通です。

19~23歳未満の扶養家族は「特定扶養親族」と呼ばれ、所得税の場合は63万円、住民税の場合は45万円の所得控除が受けられます(一般的な大学生はこれに該当するため、特定扶養親族と仮定して話をすすめます)。 概算ですが、軽減される税額は、それぞれの所得控除額に税率をかけた金額となります。

もし、扶養家族が年収103万円を超えてしまうと、扶養控除が受けられず、所得税・住民税の負担が一気に増加してしまうのです。

では、先ほどのシミュレーションで登場した3人について、親の税負担がどうなるかを見てみましょう。 parttime-103-family-tax 4

年収110万円だったCくんを例にとって考えてみましょう。 103万円よりも7万円多い収入を得ました。所得税・住民税を考慮すると、59,500円だけ多く稼いだことになります。しかし、親の扶養から外れてしまったことで、親の所得税と住民税の負担額が108,000円増えてしまいました。家族トータルで見ると、Cくんがたくさん働いた結果として、48,500円の損失が発生してしまったと言えるのです。

秋ごろには今年の収入を確認しておきましょう

会社員やアルバイトの人の収入と税金は、1月から12月の「暦年」単位で計算されます。そのため、10月ごろまでには、今年の収入がどれくらいになりそうかを確認してください。 そのうえで、103万円を超えてしまいそうであれば、アルバイトのシフトを減らすなどして、年間の収入額を調整することをオススメします。

なお、「103万円までは届きそうにないな」という人でも、注意が必要です。 他のアルバイトの人たちが103万円の壁を意識してシフト調整をしようとした結果、年末に大量にシフトを入れられてしまって、自分の年収が103万円を超えてしまう可能性もあります。「人手が足りないから、年末にたくさんバイトに来て欲しい」と言われた場合には、その場合に収入がどの程度になるかを計算しておきましょう。

まとめ

以上のように、年収103万円を超えると、自分が税金を負担しなければならない以上に、親の税負担がとても大きくなるということがわかりました。自分だけの問題ではないため、今のうちに今年の収入がどの程度になりそうか確認しておきましょう。 また、事情があって、どうしても年収103万円を越さなければならないような場合には、あらかじめ親に「103万円の壁を超えることで、税金で迷惑をかけてしまう」と相談しておくことをおすすめします。


執筆者:横山研太郎

ねこのて合同会社 代表。1978年大阪生まれ。1級ファイナンシャルプランニング技能士。保険と投資をミックスした「守りと攻めを両立させる」資産形成プランを提案する。大学の非常勤講師を務めるなど、金融教育にも積極的に取り組んでいる。

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