日本市場に照準を合わせたアップル

iPhoneにSuicaが載る、このニュースの第一報を聞いたとき私は「これはアップルが起こした革命だ!」と思わず叫んでしまいました。その理由をこれから説明していきますが、9月7日(日本時間8日)にサンフランシスコで行われたiPhone 7の発表会を見ると、まさに日本一色で、新しいiPhoneが日本向けにつくられた商品であることがよくわかります。

アップルは完全に日本を狙い撃ちしています。狙い撃ちという言葉が悪ければ、日本をあてにしているといってもいいでしょう。このところの業績はよくありません。このまま何も手を打たなければズルズルと業績を悪化させるだけです。そこで〝アップル神話〟が根強い日本に狙いを定め、iPhone 7の発売に合わせ、Suicaの利用を可能にするというウルトラCを演じたのです。

iPhone 7には新しい機能として、①イヤホン端子の代わりに充電端子を使うイヤホンを付属している、②カメラが高画質化し望遠機能が付いている、③バッテリーの持ちが2割程度アップ、④防水・防塵規格になった、などが加わりました。これは余談ですが、アップルはiPhoneを『2001年宇宙の旅』に登場した「モノリス」にしたいのです。シンプルなiPhoneの形状をよくよく見ると、「なるほど」と思うはずです(そのためにイヤホンジャックの穴をまず塞いだわけです)。

FeliCaをあえて導入したアップル

それはともかく、あらためていうまでもなくiPhone 7の最大の特徴はソニーが開発した非接触型ICカードのFeliCa(タイプF)を採用したことです。

それによって何が変わったかというと、iPhoneで日本の電子マネーのJR東日本のSuica(スイカ)を使って電車に乗ったり買い物したりできるようになったのです。FeliCaは駅の自動改札で高速データ送受信が求められるSuicaに最適の技術だったのですが、ISO(世界標準化機構)の国際規格を得られなかったために、欧米など日本以外の国ではスマホにISO規格のタイプA、タイプBと呼ばれる非接触型通信技術・NFCを採用した決済サービスが搭載されています。そのため、FeliCaは日本だけで利用される規格となり、ガラパゴス化を余儀なくされていました。

ところが、FeliCaはその後、タイプFとして広義のNFCとして認められます。今回、アップルが日本限定とはいえ、そのFeliCaを核にして電子マネーとクレジットカードを処理しようとした、そのことこそが今回の騒動で最も注目すべき点なのです。従来から一部の熱狂的なiPhoneファンの間では待望されていたことですが、多くの人にとっては予想外の出来事だったはずです。

著者プロフィール

岩田昭男 消費生活ジャーナリスト。1952年生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。同大学院修士課程修了後、月刊誌記者などを経て独立。流通、情報通信、金融分野を中心に活動する。

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