「お金の使い方に自信がない」「本当はもっと節約できそう」と心のどこかで感じていながら、忙しい毎日の中ではつい問題を先送りしてしまうもの。一念発起して家計を改善するなら、「お金の流れを視覚化すること」が何よりも効果的です。いつ、何にいくら使ったのか記録として残すことで、家計のどこにメスを入れればいいのかが明確になるからです。

全方向にお金を使い過ぎているDINKSの家計の特徴とは

子どもを持たない共働き夫婦を表す「DINKS=Double Income No Kids」。DINKSは、経済的に余裕があるからこそ、全ての支出項目でコストがかかり過ぎている傾向にあります。ただ世帯収入が多いだけでなく、お金の入り口が二つあることで安心してしまうことも一因でしょう。家事の手間や移動時間を省くため、自炊をせず外食で済ませてしまったり、日常的にタクシーを利用することが当たり前になっていたりする家庭も多くみられます。

また、プライベートでは夫婦二人の時間を満喫できる分、毎年の海外旅行が豪華になる、趣味にもお金をかけるなど、「節約とは無縁」の生活になることも。さらには、お互いに収入があることで、家計を一つにしない、それぞれの年収や貯金額を明かさないといった家庭は少なくありません。その結果、結婚後も、独身時代のように自由にお金を使える環境が続いてしまうのです。

しかし、生活コストがかかり過ぎているDINKS家庭でも、いつかは子どもを持ちたい、家を購入したいなど、将来に向けて具体的な目標ができた時や、夫婦のどちらかがリストラや退職、転職によって減収に遭うなどした時、また、漠然とお金を使い過ぎていると感じた時、「このままではいけない」と、家計を見直すことを思い立つタイミングがやってきます。

たとえば、マネー相談に訪れたAさん夫妻は、浪費グセのついたDINKS家庭の典型でした。ある時、夫婦の貯金が合計で100万円を切っていることに気づき、慌てて家計の見直しを検討したのだといいます。

お金の流れを視覚化。『マネーツリー』アプリをどう使う?

Aさんと妻のBさんはともに33歳、正社員として働く夫婦です。毎月の収入は安定していて世帯年収も多いため、お金に困るようなことはなかったといいます。しかし、二人とも貯金の習慣がなく、お金はあればあるだけ使ってしまうタイプ。口座に生活費が残ればそれが「貯金」になり、ボーナスも基本的には、旅行など好きなことに使っています。しかし、その残りのお金も買い物の補てんなどに消え、増えたり減ったりを繰り返しているのが現状です。

また、さらに問題なのは、結婚以来一度も毎月の収支を確認したことがないこと。これまで生活費が足りなくなることはなかったため、家計を把握する必要性を感じなかったといいます。そこで、Aさん夫婦に家計簿アプリ『マネーツリー』を使い、1ヶ月の支出を記録してもらいました。

まずはありのままの家計の状況を確認するため、特に節約は意識せず、いつもと同じようにお金を使ってもらい、その上で、以下のポイントを踏まえて家計簿をつけることを伝えました。

・夫婦で一つの家計簿を共有する
Aさん夫婦のような共働き家庭では、財布が別になり、お互いの支出を全く把握していないことが珍しくありません。まずは、同じ家計簿を二人で付けて、それぞれのデバイスから確認できるようにしてみましょう。

・レシートは捨てず、取っておく
現金の支出を把握するため、レシートは捨てずに取っておきます。その都度手入力するのは面倒になり、家計簿を続けられない原因にもなりますので、ひとまず保管しておき空いている時間にまとめて入力、もしくは、自動入力機能を利用して負担を減らしましょう。

・利用しているクレジットカードや銀行口座、電子マネーをアプリに登録する
クレジットカードや銀行引き落としなど現金以外の支出は、わざわざ確認しないと明細がわからず、「何にいくら使ったか」が把握しにくくなります。アプリに登録することで、利用明細を一括してチェックすることができます。その他、電子マネーやポイント、マイルなどもひとまとめにすると効率よく利用でき、無駄がなくなります。

・毎月決まっている固定費はあらかじめ入力する
必ず支出することが決まっている毎月の固定費は、空いている時間にあらかじめ入力しておきましょう。

<Aさん夫婦のプロフィールとある1ヶ月の支出の概要>
Aさん夫婦のプロフィールとある1ヶ月の支出の概要

Aさんの1ヶ月の家計は、このようになりました。各支出項目の数字を見ると、お金を使い過ぎている印象はあるものの、貯金が9万円もできており、出費が多くても問題ないように思えます。しかし、今のところ好きにお金を使い何の工夫もしていないことから、収入が減ったり、子どもが生まれて教育費がかかったりした場合、家計が回らなくなる危険をはらんでいそうです。

共働き家庭の無駄遣いポイントとは

Aさん夫婦の家計は、固定費を大きく削ることができない一方、食費など変動費を抑さえれば、貯金に回すお金を大幅に増やせる可能性がありました。そこで、家計簿をつけてみて気づいたことや感じたことをAさん夫婦からヒアリングし、家計に関して以下のように改善することを提案しました。

・食費
家計簿をつけた月には、食費に10万円もかかっていたAさん夫婦。ランチだけでなく平日の夜も外食か、家で食事をするにしても、総菜や弁当を買って帰るなど自炊はほぼしなかったそうです。外食や出来合いの食事は、費用がかさむだけでなく、栄養バランスの偏りやカロリーを取り過ぎる心配もあります。

自炊を基本にすれば、食費はさらに減らすことができますが、いきなり頑張り過ぎると長続きしませんので、まずは外食の回数に制限を設けることを提案しました。慣れてくれば、家で食事する機会を増やす、ランチに弁当を持参する、カフェや飲み物代を節約するなど、徐々にできることを多くしていきましょう。

・日用雑貨費
日用雑貨は、ネットや近くのスーパーで休みの日に買いだめしていたAさん夫妻。足りなくなったものを必要な分だけ補充するのではなく、「必要かも」「あったら便利かも」という買い物が多かった模様です。その結果、使い切れず未開封の雑貨が家にたまっていたことも。

不要なものが多いと、収納にも困ります。たとえば、あらかじめわかっている特売日に必要な買い物ができるよう、買い物リストを作成して備えておくと、効率的に買うことができます。

・通信費
夫婦のスマートフォンに約2万円、自宅のインターネットに約5,000円がかかっていた通信費。プランの変更による節約は見込めなかったものの、解約し忘れていたスマートフォンの月額サービスを外すことで、合せて1,200円の節約になりそうです。外出先でモバイルのインターネットをあまり使わない場合は、格安スマホへの移行を検討しても良いでしょう。

・被服費
30代も半ばにさしかかると、新しい洋服を頻繁に買わなくても、ワードローブが揃ってくるもの。しかし、妻のBさんは被服費に月数万円を費やしています。聞けば、仕事のストレスをネット通販の買い物で発散させてしまうことがあるのだとか。気軽に購入できる反面、失敗も多いといいます。気に入らないものを買ってしまい、また新たな洋服を買うという悪循環を断ち切るためには、店頭で試着をしたり実際に商品を確認したりすることで、納得して買い物をすることが大切です。

そのほかにおすすめなのは、新しい洋服を買う代わりに、要らない洋服の断捨離とクローゼットの整理をすること。お気に入りの洋服だけを残すことで愛着がわき、不思議と衝動買いが抑えられますし、本当に欲しい服や必要な服だけを買おうという気持ちになれます。

・パーソナルケア費
夫婦ともに、体を動かすのが趣味というAさん夫婦。夫婦で同じスポーツジムの会員になっているそうです。運動は健康維持に欠かせませんし、立派な自己投資と考えることができます。

しかし、Aさん夫婦がスポーツジムに行く回数は、平均月2回ほど。月謝は月8,640円なので、1回あたり4,320円は割高でしょう。月会員をやめて公共施設に通う、通う分だけ回数券を購入するなどすれば、これだけで数千円の節約になります。また、「入りっぱなし」になっていてあまり利用していない諸会費は、面倒がらずに整理してみましょう。

・小遣い
元々のAさん夫婦の家計は、娯楽費と被服費にも十分お金を使い、さらに一人約30,000円を小遣いにしていました。使い道をたずねると、普段は使い切ることがないため一度は貯金するものの、数か月に一度高い買い物をする時になくなったり、使途不明のままいつの間にか使ってしまったりしているそう。月に1万円ずつ小遣いを減らすことで、これとは別に各自計画的にお金を貯めておくか、もしくは、家族の貯金に回すことを提案しました。

固定費を少しずつ、変動費を大幅に削り貯金額をアップ

Aさん夫婦の家計の特徴は、変動費に無駄が多く、それに対し、固定費では大きく削るポイントが少ないという点です。そこで、改善アドバイスを意識してもらい、再び1ヶ月家計簿をつけてもらったところ、下記のような家計になりました。

<改善後のAさん夫婦の1ヶ月の家計>
改善後のAさん夫婦の1ヶ月の家計

食費などを中心に、各項目で出費を抑えることに成功しています。これまで無自覚にお金を使い過ぎていたAさん夫婦でしたが、家計簿をつけることでお金と向き合い、ちょっとした心がけでずいぶん節約することができました。ただし、固定費のプラン変更や保険の見直しなど、今回検討したものの実行まで至らなかった項目もありました。また、これからも継続して家計簿をつけることで、さらに改善していく点が見つかるでしょう。そして、ボーナスの使い方も含めた中長期的なマネープランを考えることは、今後の課題と言えます。

ただ貯めるだけでなく、投資でお金を増やすことも考える

Aさん夫婦の家計は、各項目を節約することで、月に9万円も多く貯金できることになりました。ただし、これまでのように生活費口座にお金を残していくのではなく、不定期な出費に備える「予備費」や、特定の目的のための貯金など、用途を分けて貯めていくことが大切です。そうすれば、「大きな出費があった時にお金が一気になくなる」という無計画な使い方を防ぐことができます。

また、これだけの金額を貯金できるのですから、ただ貯めていくだけではなく、投資でお金を増やしていくことも考えてみたいところです。これまで、老後資金やマイホーム取得費用、子どもが生まれた時に備えるお金については真剣に考えたことがなかったというAさん夫婦ですが、たとえば、老後のために一人毎月1万5000円程度、投資信託で積み立てるなどしても、充分余裕があるはずです。確定拠出年金を活用すれば、税制優遇を受けながら貯めていくことがきます。

その上で、将来子どもを授かることになった時、収入が減る可能性があることも考え、さらに少ない予算で生活してみる、夫だけの収入で生活できるかシミュレーションするなども良いでしょう。なお、貯金用口座もマネーツリーアプリに登録することで、簡単に資産管理を行うことができます。ライフプランに沿って計画的に貯金を成功させるためには、目に見える形で資産を確認することが何よりも大切です。数字が増えていくのを見るだけでもモチベーションが上がり継続する意欲が湧きますので、あなどれない工夫ですよ。

記録をつけることで浪費をセーブ。さらに有意義なお金の使い方へ

今回、夫婦が同じ家計簿を共有することで、相手が、そして自分自身がどのようにお金を使っていたのか初めて明確になったというAさん夫婦。また、家計簿をつけることで、「今の買い物は無駄使いだったかも」と反省する習慣ができたのは、もう一つのメリットだったそうです。家計簿をつけながら「消費」なのか「浪費」なのかを振り返ることで、より良いお金の使い方ができそうですね。

収入が多いことで浪費してしまいがちな共働き家庭ですが、だからこそ、家計の改善ポイントがわかれば、支出を大幅に減らすポテンシャルを持っています。家計をどう改めたら良いのかがわかれば、あとは収支を記録に残すことで、さらに有意義な使い方が発見できるはずです。


執筆者:武藤貴子

ファイナンシャル・プランナー(AFP)。1983年埼玉県生まれ。会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやコラム執筆を行う。独立後は、起業のコンサルティング業務とともに、執筆や個人マネー相談、メディア出演などを中心に活動中。著書に『いちばん稼ぎやすい簡単ブログ副業』(河出書房新社)がある。

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