米国で圧倒的な人気を誇るアメリカンフットボール。中でも、プロ団体のナショナル・フットボール・リーグ(NFL)の優勝決定戦であるスーパーボウルは、テレビの年間最高視聴率を獲得するなど、全米が熱狂する試合として知られています。今年は、New England Patriotsが34対28でAtlanta Falconsを打ち負かし、奇跡的な逆転優勝を果たしました。

AIがスーパーボール勝敗の詳細までを正確に予測した

スーパーボウルの勝敗の行方は、当然ながら賭けの対象ともなるほどですが、過去19年の間に1641件もなされた得点予想では、正確にファイナルスコアまで言い当てたものは、わずか2件しかなかったといいます(Scripps Howard発行の資料による)。

ところが、群知能(集合的ふるまいの研究に基づく人工知能技術。英語では、Swarm Intelligence)の開発を行うUnanimous A.I.が、その技術を使ってグループチャットに参加した人々の会話などを分析し、予想を立てたところ、優勝チームはもちろん、両者の得点まで正確に予測できたとのことです。

これだけでは、確かにまれではあっても、単なる偶然と思うかもしれません。しかし、Unanimous A.I.の予測システムであるUNUは、直近のケンタッキー・ダービー(アメリカクラシック三冠の1つで、米国の競馬イベントの最高峰)の上位4位までの馬を的中させ、NFLのプレーオフトーナメントであるスタンレー・カップの優勝チームを過去2回連続で当て、プレイオフゲームそのものの結果も10試合中9試合について正しく予測していて、これは明らかに有意の結果と考えるべきでしょう。

資産運用は専門家からAIが担う領域に?

Unanimous A.I.のビジネスモデルは、この技術を企業に対する消費者フィードバックサービスに応用したり、ソーシャルメディアをより深く、楽しく活用するために利用することから収益を上げることです。ちょっと考えると、高額の賭けの対象となるような事柄に関しても驚くほど正確な予想結果を出しているわけですから、それ自体をビジネス化することも可能のように思えます。

たとえば投資信託は、資金運用を専門家に託して株式投資などを行い、そこから利益を上げていますが、その専門家が人間ではなくAIだったとしても、信託会社がきちんと責任を持つ限り、まったく問題はないはずです。

人工知能の能力を判定するためのチューリングテストでは、任意の質問に対する答えが、人間によるものか機械によるものか判断つかなくなれば、その機械が知性を持ったと考えて良いとされています。UNUは、質問に流暢に答えるタイプのAIではありませんが、おそらく信託会社がUNUのようなシステムを用いて資金運用を行っていても、顧客はまったく気づかないのではないでしょうか。

こうしたビジネスは、もしUnanimous A.I.自体が参入しなくても、他のAI企業やこれから起業するAIスタートアップが、必ず踏み込んでくる領域となるでしょう。その判断に従っている限り、賭けや投資で損をすることがなくなるとすれば、AIはお金の使い方を賢くしてくれるといえそうです。ただし、そうしたお金の使い方が果たして楽しいことなのかという点は、また違った話になってくるのかもしれません。


執筆者:大谷和利 テクノロジーライター,原宿AssistOnアドバイザー,自称路上写真家。Macintosh専門誌, デザイン評論誌, 自転車雑誌などの誌上でコンピュータ,カメラ,写真,デザイン,自転車分野の文筆活動を行うかたわら,製品開発のコンサルティングも手がける。