JR東日本の持つ圧倒的な強み

JRE POINTの強みはなんといっても膨大な潜在需要です。母体となるJR東日本は単なる鉄道会社ではなく、総合的なサービスを提供する生活インフラ企業という位置づけも可能です。駅ビル事業の売り上げは年間1兆円、小売り事業は4000億円を超えています。

その背景にあるのが、1日1700万人、1年間で62億人に達するJR東日本管内の駅の利用客です。この世界人口75億人に匹敵するような潜在顧客に対して、いちばん便利なポイントを提供しようというのがJRE POINTなのです。

共通ポイントというと、グループの外に出て加盟店(市場)を開拓するというイメージがあります。ところがJRE POINTの場合、すでに62億人という内なる超巨大市場が用意されているのですから、外に出ていく必要などまったくないといってもいいのです。

そのため、JRの利用客に対するサービスを最優先することが基本方針になっていて、それをJR東日本ではあえて「内向き戦略」と表現しています。

JR東日本の「内向き戦略」の真意

内向き戦略というと、貝のように殻を硬く閉じた状態を連想してしまい、うしろ向きの消極的な戦略ととらえがちですが、決してそうではありません。朝晩、通勤と通学にJRの駅を利用するビジネスパーソンや学生、昼間に買い物や食事するために駅を訪れる女性や中高年、そのほかさまざまな目的を持って駅を訪れる人がいます。

そうした1日あたり1700万人にのぼる潜在的な優良顧客をターゲットにして需要の掘り起こしを図るのはきわめて理にかなった戦略であるといっていいでしょう。しかも、1700万人の中には、地方から東京にやってきたという人もかなりいるはずです。そう考えると、首都圏内のJR駅とその周辺に限定されているとはいっても全国を網羅しているのと同じです。

そのためJR東日本の担当者からは、「全国津々浦々に広く薄く加盟店をもってもサービスは疎かになる。それよりも首都圏を狭く深く固めたほうが効果的で、サービスの中身も充実する」という意見がでてきます。

わざわざ苦労して全国に加盟店をつくらなくても首都圏を中心に商圏を固めてしまえば、十分な売り上げと利益を確保できる、という考えは数字の裏付けがあるだけに一定の説得力があります。東京一極集中を逆手に取るビジネスの論理といえるでしょう。

著者プロフィール

岩田昭男 消費生活ジャーナリスト。1952年生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。同大学院修士課程修了後、月刊誌記者などを経て独立。流通、情報通信、金融分野を中心に活動する。

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