先月カナダで開かれた、主要7カ国首脳会議、いわゆるG7サミットで移民政策を議論中に、トランプ米大統領が安倍首相に「シンゾー、君(の国)にはこの問題はないだろう。だが、私が(日本に)メキシコ人を2,500万人送り込めば、君はすぐ退陣することになる」と話したことが議論を呼びました。

移民とは無縁の日本?私たちに欠けている視点

確かに日本では、他国からの留学生の姿はよく見かけるようになったものの、移民や難民となると、ほとんど意識にも上らないほど、無縁のものと思われているフシがあります。

しかし、移民ではないものの、発展途上国の若者などが日本で3年間の技術実習を受けられる技能実習制度には、農業をはじめ、漁業、製造業など70種類以上もの職種で、合計約23万人もの外国人が参加(平成29年末時点のデータ)していたり、現実には留学生ビザなどで来日してそのまま不法滞在して就労している人たちも、かなりの数に上ると見られているのが実情です(その背景には、サービス業や建設業が抱える人出不足の問題が見え隠れします)。

近い将来、労働人口がさらに減少すれば、移民政策がその切り札となることも容易に予想されますが、今回は、日本の今後への参考になればと、フィンテックやブロックチェーンを移民や外国人労働者のために役立てているアメリカと香港の事例を紹介することにしました。

祖国からの送金と家族への仕送りを楽にする国際送金サービス

移民や外国人労働者は、様々な不安を抱えて、祖国から新天地や出稼ぎ先にやってきます。文化的な違いに対応できるか、差別されたりしないだろうかという不安がもちろんあります。

中でも切実なのは経済的な問題(移民先の国への到着時に所持金がないなど)であり、住所が定まらないうちは銀行口座を持つことができないことや、口座が作れても今度はお金の移動に関する壁にぶつかります。

入国当初は祖国からの送金を受け取ったり、収入が確保できるようになれば今度は親や家族へ仕送りをしたりすることが多くなるようです。

どちらの場合も、国際送金に時間がかかったり、少なからぬ手数料を取られるため、経済的に苦しい中で送金に伴う数々の手続きをする移民や外国人労働者にとって、そうした負担は無視できないわけです。

しかし、そうした人たちの間でも、携帯電話やスマートフォンは必需品であり、常に持ち歩くデバイスとなっています。そこで、一部のフィンテック企業は、この点に着目してモバイル送金サービスをはじめました。

その最大手ともいえるRemitlyは、アメリカやヨーロッパ、北欧諸国、オーストラリアから、アジア、中南米、アフリカの国々への送金手段として、迅速かつセキュア、そして高交換レート&低手数料をセールスポイントに躍進を続けています。たとえば、手数料は、数分内に相手に届くエクスプレスサービスでも数ドル、3~5日で届くエコノミーサービスでは無料で済むという具合です。

こうしたサービスを利用する移民や外国人労働者は、既存の送金サービスを利用していたときと比べて、より頻繁に、より高額の仕送りを、より多くの送金先に向けて行えるようになったのでした。

送金の苦労と不安を解消するブロックチェーン

また、巨大EC(電子商取引)企業として有名な中国のアリババも、先頃、香港のフィリピン人労働者の祖国への仕送りニーズを狙いを定め、ブロックチェーンベースの送金サービスを開始しました。

アリババの代表者であるジャック・マー氏は、仮想通貨のビットコインに対してはバブルであると懐疑的な見方をしていることでも知られる人物ですが、その背後にある電子台帳システムのブロックチェーン技術は高く評価しています。

アリババグループ内でこの送金サービスを担当するのは、日本でも家電量販店やドラッグストアなどで、その名をよく目にするようになったAlipay(支付宝)です。Alipayは、中国消費者向けオンライン支払いサービス最大手で、会員数は2017年の時点で4.5億人以上、モバイルペイメント市場でのシェアは約54%とされています。

これまで、香港でフィリピンに送金するには、窓口で何時間も並び、正しい申請書類を探して書き込む必要がありましたが、今では自分のスマートフォンのアプリを使って数秒で安全に送金可能となったのでした。現在は、3ヶ月のテスト運用期間中で、手数料は無料となっていますが、正式運用が開始された後も、低く抑えられる見込みです。

フィリピンの海外労働者による仕送りの総額は、同国のGDPの10.2%(2016年のデータ)を占めるほど大きいため、香港からの送金に限っても、このようなデジタル送金サービスが人気を集めていくことは間違いないでしょう。

日本では、移民や外国人労働者の問題が労働力との関係で語られることが多いわけですが、ここで挙げた企業は、そこに巨大な市場を見出しています。移民の受け入れが不可避的なものとなっていくのであれば、そのように前向きに捉えて、新たなフィンテック系のビジネスチャンスを見出すのも1つの考え方といえそうです。


執筆者:大谷和利

テクノロジーライター,原宿AssistOnアドバイザー,自称路上写真家。Macintosh専門誌, デザイン評論誌, 自転車雑誌などの誌上でコンピュータ,カメラ,写真,デザイン,自転車分野の文筆活動を行うかたわら,製品開発のコンサルティングも手がける。原宿アシストオンのウェブサイト

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