会社員が使える「特定支出控除」という制度をご存知でしょうか。これは、仕事のために買ったスーツや書籍、資格取得の費用などが経費にできるというものです。仕事に必要と認められた経費を負担し、一定の金額を超えた場合、確定申告を行えば払い過ぎた税金を還付してもらえます。

「サラリーマンの経費は会社が払ってくれるし、確定申告するものはない」と思っている人も多いかもしれませんが、経費だと意識していなかったものでも確定申告することで控除される可能性があるのです。

特定支出控除の対象になる経費の範囲は広い

特定支出控除は、2013年分からその基準が見直され、対象項目や対象者の範囲が大きく広がり、より多くの人が利用できるようになりました。では、会社員ならぜひ知っておきたい「特定支出控除」に該当する経費にはどのようなものがあるのか、確認してみましょう。

通勤にかかる費用
通勤に利用する交通費を自ら支払っている場合や、会社から支給される交通費を超えている場合は、特定支出として申請することができます。ただし、正社員の場合は会社から交通費が支給されることがほとんどですので、派遣社員やパートの方で交通費を自己負担している人や遠方から勤務先に通っている人が利用するというケースが多いでしょう。

転勤に伴う転居にかかる費用
転勤によって引っ越しをする際は、こちらも会社から費用が支給されることが多いですが、自身で費用を負担した場合には特定支出控除を受けることができます。

単身赴任の帰宅にかかる費用
単身赴任をしている人が、配偶者の住む住居へ帰宅する時の費用も特定支出に含めることができます。しかし、年数回の帰宅費用は会社が負担する場合が多いため、申請する機会は少ないかもしれません。なお、利用する場合は1ヶ月に4往復までという基準があります。

資格取得のためにかかる費用
仕事に必要な資格を取得するための費用も、特定支出となります。自動車免許、英語検定、簿記などの他、制度の改正により、医師、弁護士、公認会計士等の資格取得に関しても特定支出控除の対象となりました。また、MBA取得のために大学院へ通った学費なども当てはまります。会社から補助金が出る場合もありますが、自費で負担した場合は申請できることを覚えておきましょう。

研修にかかる費用
業務を行う上で習得すべき技術を学ぶために受けた研修費用も、特定支出の対象です。こちらも会社が負担するケースがほとんどですが、自費で受けた場合は申請しましょう。

業務に関する交際費
制度改正後に加えられたのが、交際費です。交際費は会社が負担することが一般的ですが、取引先の接待費用やお歳暮費用なども特定支出となります。

業務に関する書籍の購入費用
仕事に関する書籍や雑誌、新聞を購入するのに使った代金も、特定支出に該当します。他の項目は、会社が負担することが多かったり、該当する人ばかりではなかったりしますが、この項目は多くの人に当てはまるのではないでしょうか。仕事のために購入した書籍などがないか、一度確認してみてください。

業務に関する衣類の購入費用
スーツの他、事務服や制服などの購入費用も特定支出です。こちらも多くの会社員に関わりのある項目なのではないでしょうか。その他にも、アパレル店に勤務し、仕事の上で着用する必要のある自社ブランドの洋服を購入した費用も該当します。

なお、6~8の項目は、上限が65万円までとなっています。

特定支出控除の計算方法や注意点

会社員にとって、特定支出控除はとても嬉しい制度ですよね。ただし、利用するには注意しておきたい点もあります。まず、特定支出控除を受けるためには、会社から仕事上必要だと認められたことを証明する書類と、領収書が必要となりますので忘れずに準備しておきましょう。

また、特定支出控除は、特定支出が給与所得控除額の半分を超える場合が対象となります。そのため、まずは自身の給与所得控除額を確認してみましょう。特定支出が、下記の表から導き出した給与所得控除額の2分の1を超える場合、超えた金額に対して特定支出控除を受けることができます。

給与所得控除額の計算方法(平成29年分)

たとえば、収入が500万円で特定支出が40万円の場合、 > 40万円-{(500万円×20%+54万円)×1/2}=-37万円 と計算結果がマイナスになり、特定支出控除に該当しません。そのため、確定申告の必要はないことになります。

一方、収入が1,000万円で特定支出が150万円の場合、 > 150万円-{(1,000万円×10%+120万円)×1/2}=40万円 となり、40万円を特定支出控除として確定申告時に申請することができるのです。

特定支出控除を利用して払い過ぎた税金を取り戻そう

特定支出控除の内容を知ってみると、意外と身近な制度だと感じたのではないでしょうか。しかし、一般的にはあまり浸透していないようです。マネー相談中に話題になっても、知っている人はわずかという印象。以前相談にやって来たNさんは、「確定申告をすればそんなものも控除になるのですか」と驚いた表情で話していました。

特定支出控除は年末調整ではなく、確定申告で申請しなければならず、その点は面倒に感じるかもしれません。しかし、少し手間をかけるだけで税金が「キャッシュバック」されるなら、やってみる価値があると思いませんか。とてもお得な制度ですので、利用できるかぜひ確認してみたいですね。


執筆者:武藤貴子

ファイナンシャル・プランナー(AFP)。1983年埼玉県生まれ。会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやコラム執筆を行う。独立後は、起業のコンサルティング業務とともに、執筆や個人マネー相談、メディア出演などを中心に活動中。著書に『いちばん稼ぎやすい簡単ブログ副業』(河出書房新社)がある。

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