結婚や出産など、人生の節目を迎えると、保険の加入を検討する人が多いです。親から「保険くらい入っていないのか」と言われてしまうケースもあり、なんとなく「大人になったら保険には入るもの」という印象を持つ人も多いようです。 ところで、そもそも保険は必ずしも加入しなければならないものでしょうか。

保険は低確率でも起こった時には甚大なケースに備える商品

保険加入の必要性を考える前に、まず知っておきたいのは「保険は、起こる確率は低いけれども、起こった時の被害が自分では手に負えないものに対して備える商品である」という点です。

例えば、小さな子どもと専業主婦の妻を遺して夫が亡くなった場合、現時点での貯蓄や妻が働きに出るだけではまかなえない生活費、子どもの教育資金を考えると、ある程度のまとまった資金を準備しておく必要がありそうです。医療においても、がんの治療などで先進医療を行った場合、公的医療保険の対象外になるため、貯蓄だけでは足りないかもしれません。

一方で、がんや先進医療のすべてが高額とは限りません(数千円や数万円のものもあります)し、結婚をしていても子どもがおらず共働きの場合、配偶者が亡くなっても経済的には自分で稼いで生きていける可能性も高いでしょう。また、結婚して子どもがいる家庭でも、現時点でまとまった貯蓄額がある家庭と、まったく貯蓄がない家庭の必要保障額は同じにはなりません。 貯蓄ができている家庭は、その分保障額を減らすことができます。

貯蓄は△保険は□

貯蓄と保険を比較する言葉として「貯蓄は△保険は□」という例えがあります。今から貯金を始めようとしても、すぐには貯まらないため、ちょっとずつお金が貯まる様をグラフにすると、三角形になることを表現しています。

保険は契約すると、保障対象になる事由が起きればすぐに保険金を受け取れる状態が作れるため、契約してから満了するまで担保される金額をグラフにすると四角形になるわけです。

保険には大きな保障を少ない掛け金で実現できる「定期(かけすて)」と、貯蓄性が高いとされる「終身」があります。 三角や四角の関係を考えると、貯金をしている最中は定期保険を掛け、三角が伸びお金が貯まったら保険を減額したり解約したりする組み合わせは合理的といえます。

終身保険は貯蓄性が高く魅力的ですが、保険商品である限り、支払保険料のすべてが貯蓄には回らないことに気を付ける必要があります。実際の内訳は商品によって違いますが、例えば月々1万円支払う保険料のうち、8千円は貯蓄に回るものの、残りの2千円は何らかの保障や経費として使われる、といったお金の流れになります。期間満了など、長く続ければ、保険会社が8千円をうまく運用し総支払保険料を上回る返戻金を受け取れることもありますが、中途解約の場合、通常、支払保険料を下回る金額しか戻りません。

また、終身保険は定期保険にくらべて保険料が高いのですが、これは、最終的には返戻金を受け取ることを想定しているためです。起こる確率が高い(保険金を受け取る確率が高い)事柄については、保険料も高くなるため、保険より貯蓄で備えることが一般的には向いています。

結婚ではあまり変わらず、出産前後では検討を

こうした保険の特徴を考えると、結婚というライフイベントでは保険との付き合い方はあまり変わらない可能性が高いでしょう。 独身時代同様に、自分のお葬式ができる200万円程度の貯蓄と高額医療に備える貯蓄か保険があれば、概ね対応できそうです。

子どもが生まれることになった時には、夫婦の収入減の可能性や、教育費、どちらかが亡くなった時にかさむ保育料などの養育費に備えた保険が必要かもしれません。一般的には「年収×3+1000万円×子どもの人数」といった死亡保障の目安があります。既に貯蓄できている分は減額します。

保険を検討するステップとしては、現在の貯蓄や社会保障、働き方の変更などで対応ができないかをまず考え、それでも足りない部分を保険でまかなうという手順が王道です。

安心を得つつも、かけ過ぎることで今の家計の負担を重くすることがないバランスを探っていきたいですね。


執筆者:風呂内亜矢

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者/1級ファイナンシャル・プランニング技能士)、宅地建物取引士。1978年生まれ。岡山出身。 IT企業に勤めていた26歳のとき、貯金80万円で自宅用としてマンションを衝動買いしたものの、物件価格以外にも費用がかかることを知り、あわててお金の勉強と貯金を始める。現在は自宅を含め夫婦で4つの物件を保有し、賃料収入を得ている。テレビ、ラジオ、雑誌、新聞などで「お金に関する情報」を精力的に発信している。 著書に『その節約はキケンです~お金が貯まる人はなぜ家計簿をつけないのか~』(祥伝社)等がある。