私たちは仕事でも普段の生活でも、時として壁にぶちあたり突破口が見えなくなることがあります。解決策が見えなかったり、新しいアイデアが出てこないと途方にくれます。新しいものを生み出す時には、今見えている世界から抜け出す発想の転換や新しい視点が必要となります。今回はアート鑑賞を通じて、どのように新しい視点を持ち、発想力を鍛えていくかを考えていきたいと思います。

視点を変えて壁を越える

現代アートに苦手意識を持つ方の言葉に作品を見ても「わからない」という言葉があります。私たちは正しいのか正しくないのか、正解を求める教育を受けているので、理解できないものに直面すると「わからない」という言葉で考えるのを止めてしまうことが多いです。では、本当にわからないのでしょうか。作品を見るときに自分に問いかけてみましょう。

・作品を見て、何を感じましたか?
・楽しい気分?嬉しい気分?悲しい気分?イライラした気分?
・なぜそう感じたのでしょうか?

私たちが美術館で1つの作品を見る時間はほとんどの場合、数十秒です。しかし、もう少し時間をかけながら、主体的に自分に問いを投げかけながら鑑賞していくと、自分が作品のどの部分のどの箇所を見て、何を感じているのかが見えてきます。

「わからない」のは作品ではなく、まず自分の感情や思いが「わからない」のです。鑑賞においてアートの専門知識は必要ありません。正解はないのです。自分への問いかけを深めていく中で、アート鑑賞は自分が何を感じているのか、どう思っているのか、自分を見つめる手助けをしてくれます。まずは、鑑賞を通じて自分と向きあい、自分とのコミュニケーションを楽しみましょう。

誰かと思いや時間を共有する

一人でアートと向き合うのもよいものですが、誰かと鑑賞するのも楽しいですね。作品のどこを見て、何を感じたのか「どこが好き」「どこを見て何を感じたか」言葉にして伝え合うと、同じようなことを感じた人との共感の喜びを感じることができたり、他の人と意見を通じて新しい発見が生まれます。

また、自分が何をみてどう感じたかを言葉にして伝えることで、論理的に物事を考えわかりやすく伝える力が鍛えられます。また相手の意見を聞き、それに対して自分はどう感じるのかを考えていくことで、視野が広がり、新しい世界が見えてきます。

対話を通じて鑑賞を深めていく鑑賞法はニューヨーク近代美術館(MoMa)の教育プログラムとしてはじまり各地の美術館や鑑賞会において実践されています。日本では京都造形大学のアート・コミュニケーション研究センターでの取り組みが有名です。また、2015年・2016年に毎年六本木で開催される芸術祭「六本木アートナイト」では対話型鑑賞を利用した鑑賞ツアーが開催されました。

2017年度にも多くの展覧会が各地で開催され、8月4日から11月5日まで「ヨコハマトリエンナーレ2017」が、 8月5日から11月12日には、種子島宇宙芸術祭が、8月6日から10月1日には札幌国際芸術祭などの芸術祭も開催されます。皆様も自分とのコミュニケーション、他の人とのコミュニケーションを楽しみ、新たな自分の発見や視野を広げ、発想力を高めるために、アート鑑賞に出かけてみてはいかがでしょうか。


執筆者:取材の学校 ライター 松本典子

青山学院大学国政政治経済学部卒業後、国際基督教大学で教育学を専攻。介護事業運営会社に勤務。人事として従業員が働きやすい職場づくりを目指して勤務。中小企業診断士。