106万円の壁」―「103万円の壁(注1)」、「130万円の壁」に次ぐ、第3の壁の出現です。パートやアルバイト労働の方の中には2つの壁を気にしながらシフトを組んでいる方も多いでしょう。そこに昨年の10月から新しく「106万円の壁」が立ちふさがるようになりました。この「106万円の壁」とは何でしょうか。

「106万円の壁」は、社会保険に関係します。健康保険や年金ですね。これまで、「130万円の壁」を越えなければ、被扶養者として健康保険料や国民年金保険料を納付する必要がなかった方も、加入しなければならない可能性があります。

では、どのような場合に社会保険に加入しなければならないのか、簡単に見ていきましょう。

注1:「103万円の壁」については、花輪陽子さんのブログでも紹介されています。気になる方は、そちらもご覧ください。(マネーツリー編集部より)

所定労働時間が週20時間以上である

これまではここが30時間以上でした。それが昨年より10月から20時間以上となりました。なお、この20時間は所定労働時間のみですので、残業時間は含めません。

たとえば、これまで1日6時間で週4日勤務の方は1週間の所定労働時間が週30時間に満たないため社会保険に入る対象ではありませんでした。これが他の要件も満たすと加入しなければならなくなりました。

週30時間を意識して、1日6時間で週4日や1日5時間で週5日という働き方をしている方はご自身が対象になっているか確認しておくとよいでしょう。

月額賃金が8.8万円以上が「106万円の壁」の本性

では実際のところ「106万円の壁」というものは何をさすのでしょうか。

正確には ”月額88,000円以上、12か月で105.6万円” です。

実際は、「105.6万円」のことになりますが、イメージしやすいので「106万円の壁」のまま進めます。

106万円の壁」―月額88,000円以上―は所定内賃金で計算します。賞与、残業代、通勤手当などは含めないということです。たとえば東京都の最低賃金である時給932円の人が1日6時間、週4日働いたとします。

この場合、1か月の賃金はというと、 “932円/時間×24時間/週×52週÷12か月=96,928円” です。

88,000円以上ですので社会保険に加入する必要がある可能性があります。「可能性」としたのは、この先の見込み勤務期間や勤務先の従業員規模が要件にあうか否かが関係してくるためです。ちなみに、東京都の場合、最低賃金が高いこともあり、週22時間働くと88,000円を超えることになります。

「106万円の壁」の罠

年の初めから働いている人は「106万円の壁」という理解で大丈夫ですが、気を付けなければいけないのは1年の途中で働き始める人です。

たとえば、この4月から働き始めた方も多いでしょう。この場合、上の時給932円のケースでもその年の賃金総額は約87万円です。「106万円の壁」の手前のように見えますね。でも実は月額88,000円以上であればその年に106万円未満であっても適用対象になります。判断は月額で行うことを覚えておきましょう。

その他に、勤務期間が1年以上の見込みであることなどの要件もあります。なお、今回は従業員規模501人以上の企業が強制適用の対象となります。500人以下の企業では労使の合意がある場合に限られます。

とはいえ、社会保険の対象範囲については、平成31年9月までに、さらに検討を進めることが法律で決まっています。ゆくゆくは従業員規模によらず適用が拡大されることと予想されます。これからの働き方を考えるべきときがきているのかもしれません。


執筆者:取材の学校 ライター 霜田亮

1981年生まれ。同志社大学法学部退学。大阪大学大学院工学研究科博士前期課程修了。中小企業診断士、弁理士、社会保険労務士。2016年4月独立開業。弁理士として多くの技術を見てきた経験を活かした製造業の支援が得意。「技術力を経営力に変えるお手伝い」をモットーに、事業計画作成や資金調達など多岐にわたって企業のサポートをしている。趣味は筋トレ。虚弱体質改善のため昨年からジムに通い始めたものの体力アップではなく、マシントレーニングにはまる。最近ようやくシックスパックの兆しがみえてきた。