楽天経済圏からリアルな世界へ

楽天とO2Oの関係でいえば、ネットからリアルへという世界的な流れがあって、ヤフーはその先頭に立ってリアルの世界に出ていったのですが、楽天にとっては、リアルに出ていく必然性はじつはなかったのです。

楽天にはネットの中にたくさんの顧客がすでにいて、楽天系列の事業体で構成された楽天経済圏という閉じた世界の中で自己完結しています。わざわざリアルに出ていって冒険する必要はないのです。

それでも楽天は外に出ていかなければ成長はないと考えたのでしょう(これは正しい判断 だったと思います・・・・)。そう考えた一つの要因が、じつはTポイントの存在です。Tポイントの元締めであるツタヤの創業者と楽天の三木谷社長は同じ関西生まれで、仲がよく、お互いを起業家として認めあっていました。

楽天とツタヤの亀裂

ところが、楽天が楽天市場で、DVDのレンタルを始めたことから二人の関係に変化が生じました。DVDレンタルはツタヤの主力事業であったために、頭越しになったことが相手の癇に触ったようで、最後は仲たがいしてしまいます。

それを境に楽天側は、Tポイントを警戒するようになったのですが、とくにヤフーとの提携をみて、このまま放っておいたらリアルの市場を根こそぎ奪われてしまうという危機感をもち、Tポイントに対抗するために新たな共通ポイントを立ち上げざるをえなかったということだと思います。

以上、感情的なこじれ、個人的な問題からの進出について述べました。他にもいくつか理由を指摘する向きもあります。もちろん、Tポイントとの関係はそのひとつにすぎないでしょう。実際には楽天もネットだけでは限界を感じており、リアルの豊穣な市場が欲しかったということが最大の理由でしょう。

しかし、実際にでてみると、リアルの壁は高く険しい、という現実に直面します。  

共通ポイントの高く険しい壁

そもそもネット上だけの商売は比較的に楽なのです。会員だけを相手にして、会員のセキュリティー管理さえしっかり行えばいいのですから「受け身」の商売といえます。しかし、リアルが相手ではそうはいきません。実店舗を相手にする共通ポイントの加盟店開拓はネット事業者にはかなり厳しい仕事です。

ネットのぬるま湯に浸かって仕事をしてきた社員にとっては、リアルへの挑戦は、地獄の戦いのようなものです。全く別世界の出来事と映ったのではないでしょうか。そこにTポイントの仕掛けた「一業種一社」の排他的ルールが効いてきます。

共通ポイントは業種を越えてポイントが貯まるのが特徴ですから、一業種は一社に限っておかないと市場が混乱すると、先行するTポイントが考えて、このルールを作りました。 ですから、Tポイントの場合は、コンビニはファミリーマート一社、ガソリンスタンドはエネオス一社、通信キャリアはソフトバンク一社、航空マイルはANA一社としか提携していません。絞り込むことで自らの価値を高めようという戦略なのです。

その結果、業界のトップブランドの多くがTポイント陣営に入りました。そして、二番手の多くがポンタに行くという流れになっています。そうなると、三番手の楽天が獲得できる加盟店は知れているということになります。楽天にとっては三番手のマイナーなところしか取れないのです。

出遅れた楽天の苦難

楽天はビッグネームの企業を加盟店にしようとしたのですが、なかなか思うようにいきませんでした。そのため、共通ポイントを始めると一旦アナウンスしてから、実際にスタートするのに1年かかっています。

その間に一生懸命に有力加盟店を口説き落として体制を整えようとしたのです。楽天は2014年10月に共通ポイントを開始することになりました。1年遅れでスタートした楽天ポイントの加盟店にはどんなところがあったかというと、たとえば大丸・松坂屋といったデパートにガソリンスタンドの出光、コンビニではサークルKサンクスでした。

大丸や出光は大手ですが、あとは中堅、小ぶりな会社が多く、各業界のトップ企業を加盟店にすることは難しかったのです。

しかも、会員にいちばんなじみがあって利用頻度の高いコンビニのサークルKサンクスを取れたにも関わらず、今年の秋にはファミリーマートと統合することが発表され、Tポイント陣営の一員になってしまうのです。そうなると自らが自由にできるコンビニがなくなり、楽天にとっては、これは痛手です。

著者プロフィール

岩田昭男 消費生活ジャーナリスト。1952年生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。同大学院修士課程修了後、月刊誌記者などを経て独立。流通、情報通信、金融分野を中心に活動する。

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