楽天のよきライバル、ヤフー・ジャパン

ECの雄である楽天にはアマゾンだけではなくヤフーという強敵がいます。ヤフー・ジャパンは日本のIT企業の草分けです。

2013年、ヤフーはカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)と組んで、Yahoo!ポイントをCCCの共通ポイントのTポイントに統合し自らO2O(オンライン・ツー・オフライン)を始めたのです。ネットからリアルへの拡張です。

全世界的に、成熟したウェブ事業者たちは、2010年頃に、ネット市場から未開拓のリアルの市場に出ていこうと動き始めました。ヤフーはもともとアメリカの企業ですからそういう流れに敏感です。  

ヤフーの優れた先見性

ヤフーは日本ではネットショッピングで大きく出遅れていました。今でも検索サイトというイメージが強いのではないでしょうか。

しかし、検索サイトだけではあまり収益は上がりません。そこでなんとか企業の体質を変えたい、楽天のようにネットショッピングで収益を得られるようにしたいと思ったのです。そこにちょうど出てきたのが、O2Oという新しいコンセプトでした。

「ウェブ事業者は、これからはリアルとネットの合計で評価される時代がやってくる」というのがO2Oの基本的な考え方で、それを千載一遇のチャンスとみたヤフーはリアルの協力を得ながら、ネットで邁進して、やがてはライバルの楽天を打ち負かそうと考えたのです。

今考えると、ヤフーの先見性には舌を巻くものがあります。また、目のつけどころがよかったと思います。

Tポイントとのタッグ

ただ、そのためには、ネットの外に出ていかなければなりません。もちろん、自らはリアルに何の手がかりも持たなかったのですから、より強いパートナーを探さねばなりませんでした。

その結果、白羽の矢を立てたのがリアルの店舗ネットワークを多く持っているTポイントだったのです。Tポイントは当初は単なるレンタルビデオ屋のポイントだと思われていたのですが、営業力に優れていたので、急速に加盟店を獲得しました。また、Tポイントは、機転が利いたので、ヤフーのブランドをとことん利用しました。

私は運良くその現場を目撃することができました。首都圏の私鉄沿線にある商店街でのことでした。商店会全体がTポイントの加盟店になるという話が浮上したのですが、「ビデオ店のポイントなんか扱えない」という反対意見が強くてなかなかまとまりませんでした。商店主たちが集まって最後の話し合いをしていた時です。最年長の商店会長が立ち上がって「いくら話し合ってもきりがない。あのヤフーさんが付いているんだから、大丈夫。やりましょう。」という一声で、Tポイントに加盟することが決まったのです。

「ヤフーと一緒だから安心」というメッセージは効きました。ヤフーのブランド(信用)が評価されたのです。それ以来反対していた商店主も次々と加盟店になり、その商店街では多くの店にTポイントの端末が設置されました。

そのときくらいヤフーのブランドの高さを感じたことはありません。ブルドーザーのTポイントと軍師役のヤフーが上手に役割分担してやっているのをこの目でみたのです。

共通ポイントのブレーク

ヤフーもそのおかげでたくさんのリアルの店舗と強いつながりを持つことができるようになり、ネットショッピングも急速に拡大しています。その意味では、ヤフーとTポイントの組み合わせはO2Oの成功事例として、今後長く記憶に留められることでしょう。

さらに、面白いことに、O2Oを実現するために、協力を求められたTポイントなどの共通ポイントでしたが、O2Oに協力した様々な業種の中で、何故か日本では、共通ポイントだけが大きくブレークすることになりました。

いつのまにかO2Oの話はどこかに吹き飛んでしまい、eコマース事業者、携帯キャリア、流通業者などの間で将来のリテールを左右するネットワークとして共通ポイントだけが、取り合いの対象になっています。そう考えると、Tポイントは「宝くじ」を引いたということでしょう。

著者プロフィール

岩田昭男 消費生活ジャーナリスト。1952年生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。同大学院修士課程修了後、月刊誌記者などを経て独立。流通、情報通信、金融分野を中心に活動する。

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