二人の子どもを育てながら、家族のお金をやりくりする共働き家庭のAさん。世帯年収は800万円あり、一般的な家庭と比較しても経済的余裕はありそうです。しかし、「無駄使いしているわけではないのに、なぜかお金のやりくりがうまくいかない」という悩みを抱えていました。また、いつの間にか口座のお金がなくなってしまい、将来のための貯金が計画通りにできていないといいます。実は、Aさんの家計がうまくいかない原因は「いざという時のお金」が正しい方法で備えられていないことにありました。そこで、毎月の生活費とは別に、不定期に発生する「予備費」用の口座を開設するよう提案しました。

生活費口座に余ったお金は不定期な出費で消える

毎月の生活費はほぼ一定で、コツコツ貯金をしているはずなのに、気が付くと口座からお金がなくなっているということはありませんか。心当たりがあるなら、それは生活費口座や貯金から「予備費」を使ってしまっている可能性があります。

予備費とは、普段の生活費とは別に備えておくお金のこと。たとえば、友人や親族、同僚の結婚式に出席すれば、ご祝儀や交通費などで、一度に数万円単位のお金がかかります。一人当たりのご祝儀の相場は、友人で3.0万円、上司で3.8万円、親族になると6.4万円が平均金額(注)。それを「生活費口座の余り」から支出すれば、当然、口座からお金が減っていきます。特に、一年に数回結婚式に出席するような年は、それだけで十万円単位のお金を支出しているわけです。冠婚葬祭費用のほかにも、突然の出費や、年に一度の出費など不定期に出ていくお金は色々とありますので、その度に「生活費口座の余り」に手を付ければ、口座のお金はどんどん少なくなります。

注:データ出典元「ゼクシィ結婚トレンド調査2016」

こうした、いざという時の予備費を貯金から切り崩すことが習慣化している人も多いかもしれません。確かに、貯金には予想外の出費に備える役割がありますが、不定期であっても、あらかじめ予想できる範囲の出費は、生活費や貯金とは分けておく必要があります。そうでないと、今月は少し生活費が多くかかったという時に口座にお金が足りなくなっている、将来のために貯めているお金なのに予備費に使われてなかなか増えていかない、という事態になりかねません。そのため、生活費や貯金とは別に、予備費用の口座を作っておくことをおすすめします。

固定資産税や年払いの保険のほか、帰省費用も予備費口座へプール

生活費と分けるべき予備費には、どのようなものがあるでしょうか。まずは、「前もって決まっている出費」を洗い出してみましょう。たとえば、年に一回または数回にわたり支払う税金や保険料などが当てはまります。住宅を取得した人は、住宅ローンのほかに固定資産税の支払いがありますし、保険料を年払いにしている場合は、一年に一度、大きめの出費が発生します。また、毎年決まって帰省している場合は、帰省にかかるお金もそうです。この他にも、毎月必ず出ていく生活費とは別に、あらかじめ把握できる出費があれば、それも予備費として組み入れてみましょう。これらは不定期に発生する本来の意味の「予備費」とは厳密には異なりますが、毎月必ずかかる生活費ではないため、口座を分けて用意しておくのが賢明です。

そして、文字通り、不定期に発生する「急な出費」も、予備費から出せるようにしておきましょう。冠婚葬祭費のほか、友人の出産祝い、医療費がかさんだ月の補てんなど、いざという時、何にでも使えるお金をストックしておくのです。

これら予備費は、毎月の給料やボーナスから一定額を貯めていきましょう。あらかじめ支出が決まっているものと急な出費で口座を分けるのもいいですが、口座が多過ぎると管理が大変になるため、予備費口座は大まかに一つで問題ありません。また、「急な出費」のために使えるお金は、「少なくとも○万円以上は常備しておく」と決めておきます。はじめのうちは金額の目安が立てにくいものですので、まずは10万円程度を目標とすると良いでしょう。

生活費口座にお金が充分余るようであれば、予備費口座に移します。反対に、生活費がピンチの月には、予備費口座から補てんするようにします。あくまで、生活費と予備費を一緒くたにしないことがポイントです。

しかし、どうせ同じように出ていくお金なのに、なぜ口座を分ける必要があるのか疑問に感じる人もいるかもしれません。結局、手元に残る金額は変わらないのだから、どの口座から出しても良いでしょ、ということです。予備費口座を分けるのは、貯金に手をつけることを防ぐほか、「使途不明金」をなくすという効果もあります。予備費口座を作ることで、生活費の他に何にお金を使っているのか把握することができるからです。その結果、年間のマネー計画を立てやすくなりますし、目標金額を貯めるためにはどこをいくらくらい削れば達成できるといった目安にもなります。生活費と分けるのは多少手間がかかりますが、それでも予備費は別途確保しておきたいところです。

住宅取得費用や教育資金は「先取り貯蓄」する

生活費と予備費を分けたら、あとは、貯金用の口座でお金を貯めていきましょう。ここでは、住宅を購入するための費用や、子どもの進学に対する教育費など、将来に向けてのお金をコツコツ積み立てていきます。生活費や予備費と完全に分けることで、特定の目的のためのお金を、他の用途で使い込んでしまうことを防ぎます。

お金を予定通り貯めるには、口座を分けるほか、「先取り貯金」が有効です。勤め先にある場合は「財形貯蓄制度」、なければ金融機関の「自動積立定期預金」などを利用し、給料から天引きで貯金分のお金を別口座へ移しましょう。

自動的に貯まる仕組みを取り入れることで、たとえ忘れていても勝手に貯金ができます。普段は、生活費口座と予備費口座を使い分けることを前提にすれば、しっかりお金が貯まり、いざという時にも困らない家計が出来上がります。

「お金の管理は難しい」と感じている人が多いかもしれませんが、お金の使い道や使う頻度ごとに口座を分けてみると、やりくりしやすいことがわかります。予備費は、家計のセーフティーネットとしての役割を果たしてくれますので、生活費と一緒になっているなら、ぜひ別口座を設けてみましょう。


執筆者:武藤貴子

ファイナンシャル・プランナー(AFP)。1983年埼玉県生まれ。会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやコラム執筆を行う。独立後は、起業のコンサルティング業務とともに、執筆や個人マネー相談、メディア出演などを中心に活動中。著書に『いちばん稼ぎやすい簡単ブログ副業』(河出書房新社)がある。

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