岩田先生の連載第5回目、Part 4です。イオンVSセブンの共通ポイント戦争がこれからどう展開されていくのか、その今後に迫ります。

外部に提携先を広げて使い勝手をよくしたWAON

前回のPart 3では、nanacoのポイント還元率についてお話ししました。このポイントの面ではナナコが非常に有利なわけですが、ポイントの拡販という営業面では対照的でした。WAONはいけいけどんどんで、吉野家やファミリーマートなどのナショナルチェーンと提携してグループの外でポイントを使えるようにしました。

それに比べるとナナコはいってみれば純血主義で、セブン‐イレブンを中心としたグループ内の利用に限られました。逆にいうとドル箱のコンビニ、セブン‐イレブンの売り上げを上げるために外には出さないという戦略だったともいえるでしょう。

営業戦略がWAONとはまったく逆で、せいぜいイトーヨーカドーとデニーズで使えればいいという考えだったわけです。

その点で、WAONとナナコは別の方向を向いていたのですが、ここにきて共通ポイントという同じ方向に向けて歩き出したということになります。

共通ポイントでも鎬を削る両者

最初に共通ポイントにトライしたのはナナコの方だったようです。この3月に、セブン&アイは、ナナコを使って共通ポイントを真似た取り組みを始めたばかりでした。

自社ポイントとしてナナコポイント(1%還元)を発行していますが、「どこでも」「いつでも」使える共通ポイントのブームは凄まじく、最近はTポイントやポンタポイントに勢いで押され気味だったようです。そのために、システム回りの面倒をみているJCBと話し合って、共同で共通ポイントに似たサービスをキャンペーンというカタチで開始することになったのです。

具体的には、セブン-イレブンでJCBカード(オリジナルシリーズ)を使うとOkiDokiポイントが有利に貯まるようにして、それをナナコポイントに高還元率で交換できる仕組みを作り提供するというものでした。このサービスの注目点は、ほとんどグループ内でしか利用できないナナコの短所をカバーするために、JCBの全国に広がる加盟店を活用するというアイデアです。

クレジットカード会社が共通ポイントづくりのサポートをする初めてのケースになるわけで、JCBとすると、願ってもない話ではありました。しかし、国際ブランドという手前一事業者を特別優遇することはできないために、大々的なPRは控えざるをえなかったようです。

ところが、そこにイオンが独自に作った共通ポイントをぶつけてきたために、せっかくのキャンペーンが霞む結果になってしまったのです。おまけにグループ会長の交代というお家騒動があって、セブン&アイは、ポイント戦略どころではなくなってしまいました。

セブン‐イレブンの権力闘争が与える影響

今後、ナナコはJCBの全面的な支援を受けて共通ポイントの拡大に全力をあげていくはずです。もちろんナナコはナナコで独自に提携先を増やしています。ビックカメラとの提携はその一つです。

さらに、セブン‐イレブンという切り札を持っていることがナナコの最大の強みであり、そこを固めることができれば、WAONに対する優位性は維持できます。それでも鈴木会長という重しが取れたことで、逆に外部との提携が加速する可能性もあります。経営トップの権力闘争という内部のごたごたの影響も無視できませんが。

WAON POINTという共通ポイントによって会員がどれだけ伸びるかによっても両者の戦いの行方は違ってきます。イオンにとって、グループ内とグループ外のポイントをいかにうまくバランスよく育てていけるかが、それこそ大きなポイントになります。

いずれにしろ、イオンの共通ポイント参入は、タイミングがタイミングだったために、イオン、セブンの二大流通陣営の電子マネー、ポイント戦略に大きな影を落とすことになりました。現状は、イオンに押されっぱなしのセブンですが、この危機に対して、セブンの井阪新体制がどう反撃してくるのか、みものです。井阪氏はセブン-イレブンの社長であり、ナナコ戦略の総大将でもあったのですから、全く新しい共通ポイントを出す可能性もあります。注視しましょう。

著者プロフィール

岩田昭男 消費生活ジャーナリスト。1952年生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。同大学院修士課程修了後、月刊誌記者などを経て独立。流通、情報通信、金融分野を中心に活動する。

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