岩田先生の連載第5回目、Part 3です。イオンが共通ポイントに参入したことで、セブンとの共通ポイント戦争が勃発します。

絶妙のタイミング

セブン‐イレブンの育ての親といわれる鈴木敏文会長が引退を表明したその日(4月7日)に、イオンが自社ポイントWAONの共通ポイント化を発表したのです。ライバルが混乱しているすきに、また、nanaco(ナナコ)が今後半年は混乱するだろうことを見越して先制パンチをくらわした格好です。

それにしても両社のライバル意識の強さは凄まじいものがあります。両社とも2007年の4月にWAONとナナコの電子マネー、ポイントサービスをスタートさせています。ナナコが4月23日、WAONが4月27日でした。

私は両方の記者発表の場に出向いたのですが、大井町にあるイオンの大型店舗で行われた発表会では、肝腎のWAONのデモンストレーションがうまくいかず、たくさんの報道陣の前で、イオンの社員が対応に追われていたことを憶えています。ナナコがいち早くスタートを切ったため焦ったイオンはまだ開発途上だったにもかかわらず見切り発車したから混乱したのでした。

ポイントをつけた流通業者としての先見の明

当時はまだイオンとセブン&アイの二大流通グループとはいわれていませんでしたが、やはり先見の明があったのです。両者は共にWAONとナナコという電子マネー、ポイントサービスをつくって業績を伸ばしたのです。とりわけ、ポイントサービスを同時につけたことの意味は大きかったといえます。

その前に出ていた楽天のEdy(エディ)もSuica(スイカ)もポイントはついていません。これはいまだに変わりません。ICチップのなかにポイントは入っていません。つまり電子マネーとポイントは一体化していないのです。

ところがWAONもナナコも最初からポイントを入れたわけです。これはやはり流通業者ならではです。最初から電子マネーというよりもポイントカードとして使ってほしいというイメージがあったのでしょう。

カードのマスコットキャラクターもWAONがイヌならナナコはキリンです。こんなところにも両社のライバル意識がよく現れていておもしろいです。何から何まで対抗意識丸出しなのです。

ポイント還元率ではナナコが断然有利

ただし、大きく異なる点もあります。それはポイントの還元率です。ナナコは100円の買い物で1ポイント(1円)もらえますから、還元率は1%です。それに対してWAONは200円で1ポイントですから、還元率は半分の0.5%です。

これを単純に比較すれば誰でもナナコの勝ちだなと思います。ナナコはWAONの倍の1%なのですから。ナナコの担当者に取材をしてみると、「セブン‐イレブンを説得するのに苦労しました」といいます。セブン‐イレブンのオーナーではなく本部が負担しているのでしょうが、1%というぎりぎりの線で決めたという自負が感じられました。

このことをWAONの担当者に伝えると、苦虫をかみつぶしたような顔をして黙ってしまいました。少ししてから「うちは確かに0.5%しかないけれども、感謝デーには商品が5%引きになります。それをうまく使えば問題ないでしょう」というのです。

著者プロフィール

岩田昭男 消費生活ジャーナリスト。1952年生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。同大学院修士課程修了後、月刊誌記者などを経て独立。流通、情報通信、金融分野を中心に活動する。

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